フランス・オペラ文献案内
フランス・オペラ文献案内

A 17・18世紀の文献
カンペール作『ポモーヌ』(楽譜)
Robert Cambert, Pomone, pastorale mise en musique, précédé du livret de Pierre Perrin, Minkoff Reprint, Genève, 1980.

キノー、『劇作品(悲劇、喜劇、オペラ)』
Philippe Quinault, Théâtre, contenant ses tragédies, comédies et opéras, Nouvelle édition, augmentée de sa vie, d'une dissertation sur ses ouvrages, et de l'origine de l'opéra, 5 tomes en 1 vol, réimpr., 1778, Slatkine Reprints, 1969.
リュリとともにフランス・オペラを創始したフィリップ・キノーのオペラが収録されている。

ラ・モット、『全集』
Antoine de La Motte-Houdar, Oeuvres complètes, 1754, 2 vol., Slatkine Reprints, Genève, 1970.
カンプラの『優雅なヨーロッパ』をはじめとして、デトゥッシュ、マレ、ルベル&フランクール、ラ・バールなど多くの作曲家に台本を提供している。

『リュリとフランス・オペラに関する資料』
Textes sur Lully et l'opéra français, «Introduction» par François Lesure, Minkoff, Genève, 1987.
以下の三つのテクストが収録されている:
  1. Charles Perrault, Critique de l'opéra ou examen de la tragédie intitulée Alceste ou le triomphe d'Alcide.
  2. Saint-Évremond, Sur les opéra.
  3. Antoine-Louis Lebrun, Th´âtre lyrique avec une préface, où l'on traite du poëme de l'opéra. Et une réponse à une Epître satyrique contre ce spectacle.

バシイ、『上手に歌う技法』
Bénigne de Bacilly, L'Art de bien chanter, 1679, Minkoff reprint, Genève, 1972.
歌手、作曲家で、ド・ニエール(ラ・フォンテーヌが彼に書き送った、オペラ批判の書簡詩は有名)の弟子である。エルブーフ公などに仕えた。たくさんの曲集を出版したが、その多くは失われた。

ブロッサール、『音楽辞典』
Sébastien de Brossard, Dictionnaire de la musique, Paris, 1703, Troisième édition, 1708, Minkoff, Paris-Genève, 1992.
タイトルに「音楽で使われるギリシャ語、ラテン語、イタリア語、フランス語の用語の説明を収録した」とある、フランスで最初の音楽辞典。

ラグネ、『音楽とオペラにおけるイタリア人とフランス人の比較』
François Raguenet, Parallèle des Italiens et des Français en ce qui regarde la musique et les opéras, Paris, 1702, Minkoff, Genève, 1976.
イタリア音楽とフランス音楽の比較論争を引き起こすきっかけとなった著作。ラグネはブイヨン卿について1698年にローマに行き、イタリア・オペラやベルニーニに驚愕した人である。

ルセール・ド・ラ・ヴィエヴィル『イタリア音楽とフランス音楽の比較』
Lecerf de la Viéville, Comparaison de la musique italienne et de la musique française, I-III, Bruxelles, 1705-1706, Minkoff, Genève, 1972.
ルーアンに住み、ノルマンディー高等法院の評定官を勤めた人で、したがってオペラの愛好家である。

グリマレ、『朗読、公演、朗唱、歌におけるレシタティフ論』
Jean Léonor Le Gallois, sieur de Grimarest, Traité du récitatif dans la lecture, dans l'action publique, dans la déclamation, et dans le chant, 1707, AMS, New York, 1978.
演劇の愛好家で喜劇を書いたり、自らも演じたりしていた。

デュボス、『詩と絵画に関する批判的考察』
Jean-Baptiste Dubos, Réflexions critiques sur la poésie et sur la peinture, 1719, septième édition, 1770, Slatkine Reprint, Genève, 1993. 邦訳『詩画論Ⅰ,Ⅱ』,木幡端枝訳,玉川大学出版部,1985年.
ロックに傾倒し、感覚主義的な音楽美学を主張した。この著書はオペラに関する研究書に必ずと言っていいほど引用される必読書。

ド・ブロス、『ド・ブロス卿のイタリア書簡』
Charles de Brosses, Lettres d'Italie du Président de Brosses, texte établi, présenté et annoté par Frédéric d'Agay, Mercure de France, 1986.
ド・ブロス卿はブルゴーニュ高等法院長を勤めた。1740年前後のイタリア音楽を実際に見聞した経験を書簡形式で(というより日記形式?)記したこの著作は貴重。

レモン・ド・サン=マール、『オペラに関する考察』
Rémond de Saint-Mard, Réflexions sur l'opéra, 1741, Minkoff reprint, Genève, 1972.
この著作のなかに書き留められたフランス・オペラにたいする考察はルソーのそれとの類似点が多数見られ、興味深い。

マブリ、『オペラに関するP...侯爵夫人への手紙』
Gabriel Bonnot de Mably, Lettres à Madame la marquise de P... sur l'opéra, 1741, AMS, 1978.
ガブリエル・ボノ・ド・マブリはあのコンディヤックの兄である。聖職者になって外交官をめざしたが、タンサン枢機卿と衝突して、著作活動に専念することになる。スパルタの崇拝者で、歴史や哲学関係の著作が多い。

バトゥー、『同一の原理に還元された芸術』
Charles Batteux, Les Beaux-Arts réduits à un même principe, Paris, 1746, édition critique de Jean-Rémy Mantion, Aux amateurs de livres, Paris, 1989.
邦訳『芸術論』,山縣煕訳,玉川大学出版部,1985年.
バトゥーは聖職者で、ランス大学で修辞学教授をした後、パリに出てきてあちこちのコレージュで古典語や修辞学を教え、1761年よりアカデミー会員になった。

ブランヴィル、『音楽芸術の精神または音楽とその諸部門に関する考察』
C.-H. Blainville, L'Esprit de l'art musical ou Reflexions sur la musique et ses différentes parties, 1754, Minkoff reprint, Genève, 1974.
パリのヴィルロワ侯爵夫人に仕えていた作曲家、音楽理論家。彼を有名にしたのは1751年に彼がコンセール・スピリチュエルで発表した「第三旋法」である。

ダランベール、『音楽理論と実践の基礎』
D'Alembert, Eléments de musique théorique et pratique, 1752, présentation par Jean-Michel Bardez, Slatkine, Paris-Genève, 1980.
邦訳、『ラモー氏の原理に基づく音楽理論と実践の基礎』,片山・安川・関本訳,春秋社,2012年.

マルモンテル、『マルモンテル全集』
Jean-François Marmontel, Oeuvres complètes de Jean-François Marmontel, de l'Académie française, Nouv. ed., tome 18, Paris, Verdière, 1818.

シャバノン、『それ自体において、および言葉、諸言語、詩、演劇との関係において考察された音楽について』
Michel Paul Gui de Chabanon, De la musique considérée en elle-même et dans ses rapports avec la parole, les langues, la poésie, et le théâtre, 1785, Slatkine, Genève, 1969.
「ルイ大王」校の生徒時代にすでにオペラの作曲に手を染めるなどの早熟さをみせた人で、専門はギリシャ古典文学である。音楽はアマチュアだが、ラモーの友人となり、ラモー死去に際しては弔辞を発表した。

B 20世紀以降の文献
『17・18世紀フランス音楽事典』
Marcelle Benoït (sous la direction de), Dictionnaire de la musique en France aux XVIIe et XVIIIe siècles, Fayard, 1992.
人名・作品名・文献名・楽器名などを見出し語とする事典で,研究書の書誌も充実している。オペラ専門ではないが,そばにあると便利。

L'Avant-Scène Opéra
N°46 Rameau Les Indes galantes | N°62 Gluck Iphigénie en Tauride
N°68 Marc-Antoine Charpentier Médée | N°73 Cluck Alceste
N°94 Lully Atys | N°189 Rameau Platée | N°203 Rameau Les Boréades
N°209 Rameau Castor et Pollux | N°219 Rameau Les Paladins
N°243 Lully Thésée | N°264 Rameau Hippolyte et Aricie
各号でオペラを一作ずつ取り上げ,作品分析,研究論文,書誌,ディスコグラフィーを掲載する<名作オペラブックス>といったところ。

『ラモーのオペラ』
Paul-Marie Masson, L'opéra de Rameau, 1930, Dacapo Press, New York, 1972.
この著作は,たんにラモーのオペラの研究にとどまらず,18世紀のオペラ,特に1750年代までのオペラの様式について詳細な研究書となっており,この時期のフランスオペラの様式を具体的に知りたければ,格好の資料となりうる.さまざまな種類のレシタティフ,エール,ダンスについて具体的な違いを示して説明しているので,必読の書である.

『文学ジャンルとして見た音楽悲劇』
Cuthbert Girdlestone, La tragédie en musique (1673-1750) considérée comme genre littéraire, Droz, 1972.
後にカンツレールが「オペラの詩学」と呼んだような、音楽悲劇の特徴を、具体的に音楽劇詩を取り上げつつ、おそらく初めて総合的に研究した本として、フランス・オペラ研究には必見の書であるが、音楽悲劇を構成するディヴェルティスマンの側面についての言及はほとんどない。

『バロック期のフランス音楽』
James R. Anthony, La Musique en France à l'époque baroque, Batsford, 1974, revised edition 1978.フランス語版は1981年。
バロック期のフランス・オペラ、宗教音楽、器楽音楽を知るための格好の入門書。フランス・オペラでは、18世紀初めのオペラ=バレがイタリアのインテルメッツォのような当世の風俗を題材にする方向に進みながら、結局は音楽悲劇と同じように神話を題材とする方向に戻ってしまったことの指摘など興味深いところもある。またルイ14世時代に確立した王宮の音楽組織についてもわかりやすく説明されている。

『ヴェルサイユの詩学─バロックとは何か─』
Philippe Beaussant, Versailles, Opéra, Gallimard, 1981.
邦訳:藤井康生訳,平凡社,1986年.
ルイ14世の作り上げた統治機構の中にフランス・オペラがいかに巧みに組み込まれているか、そしてそれがバロックそのものの最も生き生きとした実践となっていることを解き明かした好著。訳者による解説論文「バロックの系譜」も秀逸。

『18世紀のオペラ』(論文集)
L'opéra au XVIIIe siècle, Actes de Colloque organisé à Aix-en-Provence par CAER, Université de Provence, 1982.
エクサンプロバンス大学で行われた研究集会の論文集。

『J.-Ph.ラモー、生涯と作品』
Cuthbert Girdlestone, J.-Ph. Rameau, sa vie, son oeuvre, Desclée de Brouwer, 1983.

『太陽王からルイ15世治下のパリ・オペラ座』
Robert Fajon, L'opéra à Paris du Roi Soleil à Louis le Bien-Aimé, Slatkine, 1984.
リュリが音楽劇のすべてのジャンルで手がけた作品群が、パリ・オペラ座という世界にも例を見ない機構によって、リュリの生前だけでなく、死後もつねに参照すべきモデルとして君臨したことを提示した著作である。

『啓蒙の音楽』
Béatrice Didier, La musique des Lumières, PUF, 1985.
副題に「ディドロ-『百科全書』-ルソー」とあるように、啓蒙の思想家といわれるディドロやルソーを中心として、グリム、ダランベール、カユザック、ヴォルテールたちの音楽美学を、オペラ、器楽音楽、音楽教育、聴覚科学を対象にしたり、歴史的地理的観点からアプローチしたりと、縦横無尽に踏破した研究である。2012年はルソー生誕300年、2013年はディドロ生誕300年とつづくが、執筆されてから25年たつのに、二人の音楽美学をこれ以上徹底的に研究したものはいまだに存在しない。

『ジャン=フィリップ・ラモー』(論文集)
Jean-Philippe Rameau, Actes du Colloque international à Dijon en 1983, Champion-Slatkine, 1987.
1983年にディジョンで行われたラモー協会主催のコロックの報告論文集。そうそうたるメンバーが発表している。

『啓蒙の世紀のフランス・オペラの変貌』
Maurice Barthélémy, Métamorphoses de l'opéra française au siècle des Lumières, Actes Sud, 1990.

『ジャン=バティスト・リュリ』(論文集)
Jean-Baptiste Lully, Actes du colloque Saint-Germain-en-Laye, Heidelberg 1987, réunis par Jérome de La Gorce et Herbert Schneider, Laaber-Verlag, 1990.
1987年に行われたコロックの報告論文集。編集責任者のラ・ゴルスとシュナイダーは、現在、新しい『リュリ全集』の出版に携わると同時に、リュリのサイトの運営も行っている。

『音楽悲劇』(論文集)
La tragédie lyrique, Cicero, 1991.

『フランス・オペラの詩学 コルネイユからルソーまで』
Catherine Kintzler, Poétique de l'opéra français de Corneille à Rousseau, Minerve, 1991.
ピエール・ペランによるフランス・オペラ創始の美学的準備からルソーによる美学的否定にいたるオペラの美学の歴史を考察した大著。

『リュリまたは太陽王の音楽家
Philippe Beaussant, Lully ou le musicien du soleil, Gallimard, 1992.
リュリの生涯とオペラを余すところなく記述した文献。たんなる読み物で終わらず、随所に鋭い分析がはめ込まれており、最後まで気を抜けない。

『ジャン=フィリップ・ラモー「レ・ボレアード」または忘れられた悲劇』
Sylvie Bouissou, Jean-Philippe Rameau Les Boréades ou la tragédie oubliée, Méridiens Klincksieck, 1992.
1760年の初演時15回上演された後に不人気を理由にお蔵入りになり、そのまま今日まで忘れ去られていたラモーのオペラを掘り起こした研究。

『ルイ14世時代のパリ・オペラ座』
Jérôme de La Gorce, L'Opéra à Paris au temps de Louis XIV, Paris, Desjonquères, 1992.

『オペラ上演、その詩学とドラマトゥルギー』
Isabelle Moindrot, La Représentation d'opéra : poétique et dramaturgie, PUF, 1993.

『古典主義フランスとオペラ,または驚異の真実らしさ』
Catherine Kintzler, La France classique et l'opéra ou la vraisemblance merveilleuse, Harmonia mundi (HMB 590007.08), 1998.
レコード会社ハルモニア・ムンディの《パスレル》叢書(読むことと聴くことの橋渡しをするという意味)の一つとして二枚のCDをセットにして1998年に出版された。カンツレールは「プロローグ」でフランス・オペラが非常に雑多な音楽ジャンルの流れを取り込んでできたジャンルであることを示した後、「第一幕」で世界の真の姿を合理的操作によって導きだし、それを感覚的レベルにおいて知覚可能な姿で提示することを基本とする古典主義美学の諸原理(自然の模倣,情念論,加工の自然らしさなど)を紹介する.そして「第二幕」から「第五幕」でフランス・オペラの特質を解き明かしている。

『怪物的オペラ』
Charles Dill, Monstrous Opera, Rameau and the tragic tradition, Princeton University Press, 1998.
副題に「ラモーと悲劇の伝統」とあるように、ラモーのオペラにたいする当時の批判を中心に論じた研究書。

『演劇と音楽のあいだ:17世紀および18世紀ヨーロッパのレシタティフ』(論文集)
Entre théâtre et musique: récitatifs en Europe aux XVIIe et XVIIIe siècles,
Actes publiés sous la direction de Raphaëlle LEGRRAND et Laurine QUETIN,
Cahiers d'histoire culturelle, no. 6, 1999.
1998年9月18日と19日にトゥール音楽院で行われた「17世紀および18世紀ヨーロッパのレシタティフと演劇的朗唱」というコロックの論文集である。オペラ研究とは切っても切れない関係のレシタティフをテーマにしている。従来、リュリのレシタティフはラシーヌの歌うような朗唱を真似てできあがったというのが定説であるが、ヴォルテールが晩年にこうした主張をするまでは、誰一人この二つのものを関連付けて主張したり議論したりしたものがいないことを論証したCouvreurの論文など、興味深い論文が満載。

『リュリ』
Jérôme de La Gorce, Lully, Paris, Fayard, 2000.

『アンシャン・レジーム期(1647年-1785年)のオペラの美学』
Downing A. Thomas, Aesthetics of Opera in the Ancien Régime, 1647-1785, Cambridge University Press, 2002.
第一部 French opera in the shadow of tragedy ではオペラの創始と王制機構のかかわり、リュリとキノーの『アルミード』、リュリのオペラ美学の転換としてシャルパンティエの『メデ』とラモーの『イポリトとアリシ』を取り上げ、第二部 Opera and Enlightenment:from private sensation to public feeling では、共感作用、自己同一性をキーワードにして18世紀の音楽美学の流れを取り上げている。

『音楽悲劇のドラマトゥルギー』
Laura Naudeix, Dramaturgie de la tragédie en musique (1673-1764), Honoré Champion, 2004.
新進の研究者の学位論文を出版したもので、フランス・オペラ第一作『カドミュスとエルミオーヌ』からラモーの死の年までの大部分の音楽悲劇を取り上げて、主題の問題、舞台装置と三単一の問題、プロローグの問題、レシタティフやエールの問題、ディヴェルティスマンの問題など、あらゆる構成部門を論じている。

『ガリックからグルックまで、啓蒙時代におけるオペラについての論文集』
Daniel Heartz, From Garrick to Gluck : Essays on Opera in the Age of Enlightenment, Pendragon Press, 2004.
オペラ・ブッファ三本、オペラ・セリア四本、オペラ・コミーク四本、ブッフォン論争三本、改革オペラ四本と、目配りの行き届いた構成になっている。とくにブッフォン論争の節の三本はどれも興味深い。「グリムの『ボエミッシュブロダの小預言者』」、「意図によってイタリア的だが、必要によってフランス的:ルソーの『村の占い師』」、『ディドロと音楽劇:『ラモーの甥』によって提案された新しい様式」。

『18世紀フランスの文化活動における「ブッフォン論争」』(論文集)
La «Querelle des Bouffons» dans la vie culturelle française du XVIIIe siècle, textes réunis et présentés par Andrea Fabiano, CNRS Editions, 2005
「フランス音楽遺産研究所(IRPMF)」や「革命およびロマン派研究センター(CRRR)」などが中心になって作った論文集である。ブッフォン論争が内包するさまざまな問題―喜劇的なものとオペラの関係、幕間劇というジャンル、オペラ・ブッファの受容がもたらしたもの、ブッフォン論争の政治的意義などを、音楽学者、演劇研究者、歴史家、言語学者、文学史研究者が論じている。ブッフォン論争研究の最も進んだ成果と言える。

『18世紀フランスのオペラ台本』
Béatrice Didier, Le Livret d'opéra en France au XVIIIe siècle, SVEC 2013-01, Voltaire Foundation, Oxford, 2013
もちろん18世紀のフランス・オペラの台本を網羅した上でのことだが、実作よりもオペラの美学を中心に論じた研究書。

『オペラの誕生』
戸口幸策、東京書籍、1995年。
前史として古代ギリシャの悲劇から説き起こし、フィレンツェのカメラータによるギリシャ悲劇復興運動、音楽劇の始まりからイタリアの宮廷オペラへ、そしてモーツァルトの時代までのオペラをくまなく記述したオペラの歴史書。参考文献、年表、ギリシャ・ローマ神話、古代人名対照表、作曲家別主要作品表などがあるのも便利。

『心ならずも天使にされ―カストラートの世界』
フーベルト・オルトケンパー、荒川・小山田・富田訳、国文社、1997年。
タイトルどおり、17世紀から18世紀のオペラの世界に燦然と輝いていたカストラートの真実の姿を明らかにしようとする著作だが、この時代のオペラ上演の実態や当時の人々の審美観が分かり、興味深い一冊。

『当世流行劇場』
ベネデット・マルチェッロ、小田切・小野訳、未来社、2002年。
ヴィヴァルディの時代のヴェネチアのオペラ劇場の、というよりもオペラ業界の裏側、真の姿を辛辣に、皮肉たっぷりに、暴き立てたパンフレット。著者はヴェネチアの貴族にして作曲家であり、ヴィヴァルディとは犬猿の仲にああった。当時最もオペラ上演が盛んだったヴェネチアのオペラ劇場の様子が手にとるように分る。一度は読んでおきたい。

『ペローとラシーヌの「アルセスト論争」』
村山則子、作品社、2014年。
フランス・バロック・オペラの土台の一つであるle merveilleux(驚異)の概念を「神々にのみ属する人為を超えたもの」という意味と「驚くべきもの」という意味の二つの捉え方が、すでにペローにおいて存在したことを明らかにして、1774年初演の音楽悲劇『アルセスト』上演をきっかけに起きた「アルセスト論争」の経緯をたどる。従来の「驚異」概念に新たな地平を開く優れた研究。

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