ルソー音楽思想文献案内
ルソー音楽思想関係文献案内

A 基本文献
『ルソー全集』(プレイアッド版)
Jean-Jacques Rousseau, Oeuvres complètes, «Bibliothèque de la Pléiade», Paris, Gallimard, 1959-1995.
音楽関係(『言語起源論』含む)は第5巻に収録されているが、第2巻のオペラ作品はもちろんのこと、第1巻の『告白』『ルソー、ジャン=ジャックを裁く』、第2巻『新エロイーズ』の第T部手紙48とか第U部手紙23などもルソーの音楽活動や思想を知る上では必読。『音楽辞典』の邦訳は下記の五項目だけなので、それ以外の項目は内藤のサイトを参考にされたい。そのほか邦訳のない重要なものは第5巻に『旋律の起源』L'origine de la mélodieが収録されている。これも内藤のサイトに試訳を公開している。

『ルソー全集』(Champion-Slatkin版)
Jean-Jacques Rousseau, Oeuvres complètes, sous la direction de Raymond TROUSSON et Frédéric S. EIGELDINGER, Éditions Slatkine, 2012.
ルソー生誕300年を記念して出版されたルソー全集で、プレイアド版と同じように主題別の構成になっている。音楽関係では、第12巻に「音楽関係著作」、第13巻に『音楽辞典』、第16巻にオペラ作品が収録されている。詳細はこちらのpdfを参照のこと


『ルソー全集』(Classiques Garnier版)
Jean-Jacques Rousseau, Oeuvres complètes, sous la direction de Jacques Berchtold, François Jacob et Yannick Séité, Éditions Classiques Garnier, 2011-2015.
こちらも生誕300年を記念して出版されるもので、構成は年代順になっている。とくに第8巻までに音楽関係の著作や作品が集中している。詳細はこちらのpdfを参照のこと

邦訳『ルソー全集』
ジャン=ジャック・ルソー、白水社、1979年-1984年。
第11巻にはオペラ作品と『言語起源論』など、第12巻には音楽論関係の著作が収録されている。『音楽辞典』は「音楽」「音楽家」「趣味」「旋律の純一性」「天才」だけ。上記プレイアッド版に収録されていないものとして「ブランヴィル氏考案の新旋法についてレナル師に寄す」の邦訳がある。

邦訳『言語起源論―旋律および音楽的模倣を論ず』
ジャン=ジャック・ルソー、小林善彦訳,現代思潮社,1989年。

邦訳『言語起源論 旋律と音楽的模倣について』
ジャン=ジャック・ルソー、増田真訳、岩波文庫、2016年。

『村の占い師』(楽譜)
Jean-Jacques Rousseau, Le Devin du village, edited by Charlotte Kaufman, A-R Editions, 1998.
ルソー作『村の占い師』の楽譜である。ピアノ伴奏版(Le Devin du village, partition piano et chant, Gérard Billaudot)はすでにあった(日本では民音音楽資料館が所蔵)が、スコア版の校訂版はこれが初めてである。Cynthia VerbaのHistorical BackgroundとCharlotte KaufmanのIntroductionが時代背景などを解説している。またこのオペラをイギリスに紹介・上演した音楽史家チャールズ・バーニーによる英語訳も収録している。

『ピグマリオン』(楽譜)
Jean-Jacques Rousseau, Pygmalion, scène lyrique, édition critique par Jacqueline Waeber, Université-Conservatoire de musique, Genève, 1997.
デューク大学音楽学部の若手研究者であるウェベール校訂のスコア版楽譜である。Introducitonでは、ルソーが『ピグマリオン』の音楽をオラース・コワニェに依頼することになった経緯などが英語・仏語で解説されている。

『ルソーと音楽』
海老沢敏,白水社,1981年。
氏が20年近くにわたって発表してきたルソーの音楽思想や音楽作品についての論稿をまとめたもの。とくに数字記譜法についての研究は世界的に見ても優れている。また小林善彦氏との対談も興味深い。

『むすんでひらいて考』
海老沢敏,岩波書店,1986年。
唱歌「むすんでひらいて」とルソー作詩・作曲のオペラ『村の占い師』のなかの「パントミム」の関係を膨大な資料の森を踏破して突き止めた記念碑的著作。氏の監修による「むすんでひらいての謎」というCD(King Records, KICG 3077)も出ているので、これを聞きながら、読むとさらに理解が深まる。

『理論的著作全集』
Jean-Philippe Rameau, Complete theoretical writings, ed.Jacobi, American Institute of Musicology, 1967
ルソーと音楽思想において根本的に対立し、論争をしたラモーの理論的著作は、ルソーの音楽思想を理解する上でどうしても必要となる。全部を読む必要はないが、比較的読みやすい『和声原理の証明』や、論争文書である『音楽に対する私たちの本能とその原理に関する考察』と『「百科全書」における音楽に関する誤謬』を読むことを勧める。この『理論的著作全集』の入手は困難だが、この三つなら現在でもアマゾン・コムやア・ラ・パージュ・コムで入手可能。
『和声原理の証明』
Jean-Philippe Rameau, Musique raisonnée, Textes choisis, présentés et commentés par Catherine Kintzler et Jean-Claude Malgoire, Stock, 1980.

『音楽に対する私たちの本能とその原理に関する考察』
Jean-Philippe Rameau, Observations sur notre instinct pour la musique et sur son principe, Paris, 1754, Slatkine reprints, Genève, 1971.

『「百科全書」における音楽に関する誤謬』
Jean-Philippe Rameau, Erreur sur la musique dans l'Encyclopédie, Paris 1755, Broude Brothers Ltd, New York, 1969.

『J.-J. ルソー』
Julien Tiersot, J.-J. Rousseau, 1913, 1920(deuxième édition, revue), AMS, 1978.
ルソーの音楽思想を初めて網羅的に論じた研究。音楽家ルソーの伝記としても面白い。ただ古いので、この分野の研究史的資料として読む必要がある。

『ルソーと音楽』
Samuel Baud-Bovy, Rousseau et la musique, Textes recueillis et présentés par Jean-Jacques Eigeldinger, A La Baconnière, 1988.
ジュネーヴ音楽院教授ボー=ボヴィの論文集。ルソー生存中から20世紀まで続いていた、ルソーの音楽的資質に対する否定的評価を一掃するために論陣をはったことで評価されるべき音楽学者。またラモーとの関係の重要性を指摘したことでも重要な論稿を発表している。1963年のルソー生誕250年祭において『優雅な詩の女神たち』を指揮・上演したときの録音がCDで添付されている。

『ジャン=ジャック・ルソーの芸術理論』
Philip Robinson, Jean-Jacques Rousseau's Doctrine of the Arts, Berne,1984.
ほとんど知られていない研究者の著作だが、ルソーの音楽思想に関わるほぼすべての問題を取り上げている。とくにそれまでほとんど触れられなかった初期の著作も丁寧に論じている点など好感のもてる研究である。

『啓蒙の音楽』
Béatrice Didier, La musique des Lumières, PUF, 1985.
フランス啓蒙期の音楽思想に関する研究書。古代ギリシャからの模倣論の継承と変貌、音・人声、視覚と聴覚など音楽に関わる科学的研究の分析、音楽批評家としての啓蒙派、文学作品に見られる音楽など幅広い分野の問題を、膨大な原テクストの緻密な分析によって解き明かしている。

『ジャン=フィリップ・ラモー
 古典主義時代における快楽の美学の栄光と挫折』

Catherine Kintzler, Jean-Philippe Rameau, Splendeur et naufrage de l'esthétique du plaisir à l'âge classique, Minerve, 1988.
第一部では,ラモーの音楽美学を、デカルト主義、古典悲劇の「反転」と「転移」としてのフランス・オペラの詩学、『サムソン』をめぐるヴォルテールとの確執などから解き明かし、第二部では第一部で解明された古典主義的美学(ラモーの美学)を構成する原理に対立するものとしてのルソーの音楽美学が明らかにされる。

『音楽とフランス啓蒙主義、
1750年−1764年の対話の再構成』

Cynthia Verba, Music and the French enlightenment: reconstruction of a dialogue, 1750-1764, Clarendon Press, Oxford, 1993.
1750年から64年の間のラモーと啓蒙主義論客たちの著作を両者の対話と見なして、共通の論点をもとに再構成し、両者の思想上の相違を浮き彫りにすることを目指した研究。

『ルソーにおける音楽と言語』
Musique et langage chez Rousseau, Etudes présentées par Claude Dauphin,
SVEC 2004:08, Voltaire Foundation, 2004.
2002年にモントリオールで開催された北アメリカのルソー学会のコロックによる論文集である。音楽関係の論文が満載。

『ルソーと音楽、ジャン=ジャックとオペラ』
Rousseau et la musique, Jean-Jacques et l'opéra, Actes du colloque sur Le Devin du village, Université Lumière-Lyon 2, 2006.
2003年にリヨン大学で開催されたルソーの『村の占い師』のコロックによる論文集である。『村の占い師』をメインテーマにすえたコロックはおそらく初めてのものだと思われる。

ORAGES. Littérature et culture 1760-1830
No 11, Rousseau en musique,
préparé par Olivier BARA, Michael O'DEA et Pierre SABBY, Association Orages, mars 2012.
ORAGESという雑誌のルソー生誕300年を記念した特集号で、F. JACOB, J. WAEBER, C. DAUPHIN, M. O'DEA, P. SABY, O. BARAといった音楽関係ではおなじみの研究者たちが論文を寄せている。

『ジャン=ジャック・ルソーと音楽』
海老澤敏、ペリカン社、2012年。
モーツァルト研究者としても、また『「むすんでひらいて」考』の著者としても著名な海老澤敏がルソー生誕300年に合わせて出版した著作である。たしかに、その多くは、旧著『ルソーと音楽』その他に収録されていたものの再録であるのだが、ルソーとモーツァルトの音楽的親近性を論じた箇所(第二部「私のルソー追想―モーツァルトとともに―」や第六部「音楽史の中のルソー」など、それらの著作以降に発表された論文には、さすがにモーツァルトの世界的研究者と思わせる知見が散りばめられており、読んでおくべきだろう。また近年のルソーと音楽関係の研究の批判的紹介のための著作を準備中と記されているから、こちらのほうにも期待したい。
B 総合文献
『初期ルソーの政治思想』
小笠原弘親,お茶の水書房,1979年
ルソーの音楽思想研究に政治思想の研究書?と思われるかもしれないが、ルソーの思想的深化をその時々の問題意識を鮮明にする形で解き明かしていった好著である。専門の如何に関わらず、読んでおくべき文献である。

『宮廷社会』
ノルベルト・エリアス,波田・中埜・吉田訳,《叢書・ウニベルシタス》
法政大学出版局,1981年
ルソーも大きな影響を受けたパストラルの世界をソシオ・クリティックの手法で見事に描いてい見せた著作。『村の占い師』はもちろんのこと、ルソーのオペラのほとんどはパストラルである。

『「オンファル」に関するグリム氏の手紙』
Friedrich Melchior Grimm, Lettre de M. Grimm sur Omphale,1752, dans La Querelle des Bouffons, t.I, Minkoff, Genève, 1973.
グリムの音楽観を知るにはこの著作が基本である。ブッフォン論争の下火を準備した著作ともいえる。

『音楽の自由について』
D'Alembert, De la liberté de la musique, dans les Oeuvres de D'Alembert, t.I, Slatkine Reprints, Genève, 1967.
ダランベールの音楽思想を知るために読んでおく必要のある著作。ルソーを意識して書いている箇所もかなり見受けられる。

『人間認識起源論』
Etienne-Bonnot de Condillac, Essai sur l'origine des connaissances humaines, Galilée, 1973. 邦訳:古茂田宏訳,岩波文庫,1994年.
ルソーに影響を与えたといわれるコンディヤックの著作。コンディヤックはラモーの音楽理論に影響を受けている。

『音楽著作集』
Denis Diderot, Ecrits sur la musique, éd. et introd. par B. Durand-Sendrail, Lattès, 1987.
ディドロの著作をこのような断片で読むことに批判的な方もおられるだろうが、彼の膨大な著作のすべてに目を通すわけにもいかない場合には、こちらを。

『ブッフォン論争』
La Querelle des Bouffons, textes des pamphlets avec introduction, commentaires et index par Denise Launay, 3 vol., Minkoff, Genève, 1973.
ルソー、ラモー、グリム、ディドロ、ダランベールなどを巻き込んだブッフォン論争の資料集成である。

『18世紀フランスにおける音楽的趣味の歴史素描』
Louis Striffling, Esquisse d'une histoire du goût musical en France au XVIIIe siècle,1912, AMS, 1978.
古い研究書だが、18世紀フランスの音楽美学の流れをざっとつかむための入門書としては手ごろのもの。

『17世紀および18世紀フランスにおける音楽的趣味』
Georges Snyders, Le Goût musical en France aux XVIIe et XVIIIe siècles, 1968.

『根源の彼方に
―グラマトロジーについて(上・下)』

Jacques Derrida, De la grammatologie, Minuit, 1967.
邦訳:足立和浩訳,現代思潮社,1983年・1986年

『哲学者たちと音楽』
Enrico Fubini, Les philosophes et la musique,
Genève, Champion-Slatkine, 1983.
音楽美学にかかわる諸問題が古代ギリシャからどのように議論されてきたのかを知っておくための格好の入門書。

『ジャン=フィリップ・ラモー
の時代のフランス・オペラの美学』

Etienne Haeringer, L'Esthétique de l'opéra en France au temps de Jean-Philippe Rameau, SVEC 279, 1990.
Studies on Voltaire and the Eithteenth Centuryに収録された学位論文。ルソーの音楽美学を同時代にきちんと位置付けるには,この時代のオペラの美学の理解が不可欠である。

『病のうちなる治療薬』
Jean Starobinski, Le Remède dans le mal, Gallimard, 1989.
邦訳:小池・川那部訳,法政大学出版局,1993年
「啓蒙の時代の人為に対する批判と正当化」という副題をもつこの論文集の随所でルソーへの言及が見られるが,なかでも,ルソーの旋律の統一性に触れられている第5章「U音楽の社会性」は一読をお薦めする。昨今では旋律の統一性について言及されることはほとんどないから。

『音楽と言語の起源:フランス啓蒙派の理論』
Downing A.Thomas, Music and the Origins of Language : theories from the French Enlightenment,Cambridge University Press, 1995.

『モーツァルトとルソー―魅せられた魂の響奏―
続・私の新モーツァルト・クロニクル』

ルソーとモーツァルトという巨匠のどちらをも専門的に研究してきた著者によって初めて解明された,ルソーとモーツァルトの通底する世界.第X章モーツァルトとルソーの「ルソーとモーツァルト─その外在的・内在的関係をめぐって─」(国立音楽大学最終講義)が秀逸。

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