フランス・オペラの神話と伝説

 フランスのバロック・オペラがギリシャ・ローマ神話や伝説を題材にしている場合が多いということは周知のところです。当時のフランス人でオペラを見に行くような人々(王侯貴族から中流市民、また18世紀も後半になると一般市民も)はたいてい教養として、オペラの題材になっている神話や伝説を熟知していたのですが、現代の日本人にはギリシャ・ローマ神話はごく一部のものを除いて、あまり知られてはいないと思います。そこで、オペラの作品ごとにどのような神話あるいは作品がもとになっているのかを簡単に解説します。さらに、登場人物名がギリシャ名とラテン名で違うだけでなく(これはギリシャ神話とローマ神話が必ずしもぴったり一致するわけではないため)、フランス・オペラではフランス名で登場するので、これらを比べることができるような神話人物名対照表(対照表へ)を作りました。これも合わせて参考にしてください。

『カドミュスとエルミオーヌ』エウロペの誘拐
カドモスの竜退治と国造り
『テゼ』テゼの誕生秘話
父との再会と認知
『アティス』キュベレ
『イジス』ゼウスに愛されて苦しむイオ
『ベレロフォン』ペガソスに乗って数々の武勲をあげる
『プロセルピーヌ』冥界へ誘拐された娘
『ペルセ』ペルセウスの誕生秘話
ペルセウスの冒険
アンドロメダを救うペルセウス
『アシスとガラテ』ガラテイア
『オンファル』オムパレの奴隷となったヘラクレス
『テゼ』
『メデ』
イアソンと金羊毛皮
アルゴナウタイの挑戦
王女メディア
イアソンとメディアの逃避行
『アルセスト』妻を身代わりにしたアドメトス王と
王妃を死神から取りかえしたヘラクレス
『アクテオン』鹿に変えられたアクタイオン
『カストルとポリュックス』ディオスクーロイ=ゼウスの息子たち

『カドミュスとエルミオーヌ』
エウロペの誘拐

カドモス(カドミュス)の妹のエウロペが広い牧場で侍女たちと遊んでいると、白牛がやってきた.その美しさに夢中になったエウロペがそれにまたがると、その白牛は全速力で彼女を連れ去り、クレタ島に連れて行った.この白牛はゼウス(ジュピテル)の変身した姿だった.彼女の父アゲノールは彼女の兄三人にエウロペを探し出すまでは帰るなと言い渡した.

カドモスの竜退治

誘拐された妹エウロペを探して、サモトラケ島まで来て途方にくれたカドモスは、予言の神アポロンの神託を受け、そのとおりに、くびきをかけられたことがない牛の後をついて行くと、草の上で寝転んだので、これが神託の牛だと思い、生贄にしようとすると、一匹の竜に襲われた.カドモスは槍で竜の口から歯を薙ぎ落として退治した.すると女神アテナが現われて竜の歯を撒くように助言するので、そうしたところ、大地から武装した兵士たちが続々と誕生してカドモスに襲い掛かってきた.カドモスがとっさに岩を兵士に投げつけると、兵士同士の戦いになり、後に生き残った5人の兵士たちはカドモスに忠誠を誓う.こうして彼らの力を得てカドモスはそこに都市テーバイを建設することになった.都市建設の基礎ができると、カドモスはアプロディテとアレスの娘ハルモニアと結婚することになる.婚礼の日、神々がこぞって贈り物をもってお祝いにやってきた.
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『テゼ』
テゼの誕生秘話

アテナイの王アイゲウス(エジェ)は二度も結婚したが子どもに恵まれず、アポロンの神託を伺った.デルフォイからの帰途、トロイゼンのピッテウス王の館に泊まった。神託の話をしたところ、その夜娘のアイトラを彼の寝床に行かせた.アイゲウスは、巨岩の下に短剣とサンダルを隠し、もしこれで男子が誕生したら、16歳になったときにわけを話して認知の品をもってアテナイに来させてくれるように頼んで出発した.その後男子が生まれ、テセウス(テゼ)と名づけられた.

父との再会と認知

テセウスは16歳になると巨岩を持ち上げて、父が置いていった短剣とサンダルを取り出すと、アテナイ向けて出発した.数々の試練を経たテセウスがアテナイの父の館に着くと、メディアが妻の座にいた.メディアは自分の立場が悪くなることを怖れて、テセウスを亡き者にせんと、王を騙して、酒盃に毒をもらせたが、テセウスが認知の品として置いていった短剣を出して見せたので、危うく王は毒杯を払いのけて、息子を固く抱きしめた。メディアは即座に追放された.
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『アティス』
キュベレ

『アティス』の女神キュベレ(シベール)の神話は小アジア起源の数々の異説があるらしい.それによれば、キュベレに愛された羊飼いの青年アティスは自ら去勢して命を絶ったらしい。キュベレはアティスを甦らせ、松の木に変身させた。

『イジス』
ゼウスに愛されて苦しむイオ

アルゴスのイコナス河の河神の娘イオは、アルゴスの守護女神ヘラ(ジュノン)の神殿の巫女であった.イオに目をつけたゼウス(ジュピテル)は策略を使ってイオをある湖畔に呼びだしたところ妻のヘラに見つかり、慌ててイオを牝牛に変えて、ヘラにプレゼントした.ヘラは牝牛のイオを全身に百の目を持つアルゴスに見張りさせた.ゼウスはヘルメスに命じて、退屈な音楽を奏して百の目を全部眠らせ、殺させた。イオはヘルメスに解放されたが、それを知ったヘラが怒って牝牛の耳にアブを入れさせたので、あちらこちらを逃げ回り、エジプトでゼウスの手に落ち、愛を交わした.その後エジプトに落ち着いて、王のテレゴノスと結婚した.
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『ベレロフォン』
ペガソスに乗って数々の武勲をあげるベレロポン

 ベレロポン(ペレロフォン)はポセイドン(ネプチューン)の子。女神アテナ(パラスとも呼ばれる)からもらった金のはみでペガソスを手なずけた.ある過失から国を去らねばならなくなり、ティリュンスのプロイトス(プレトゥス)王のもとへ身を寄せた.ところが王妃のステネボイア(ステノベ)がベレロポンに恋をした.彼が拒絶すると、恨みから彼に言い寄られたと王に訴えた.プロイトス王はベレロポンに手紙を持たせて、リュキアのイオパテス王のところに行かせた。その手紙にはこれを届けたものを殺すようにと記されていた。イオパテス王は殺すわけにいかず、ベレロポンが殺されることを期待して、この国を荒らすキマイラ退治を頼むが、ベレロポンはペガソスに乗ってキマイラを退治した.その後もアマゾネスと戦わせたりしたが、すべて撃退した.その強さに驚いた王は彼が神々の血筋を引いていることを認めて、娘を嫁がせて、王国を譲った.
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『プロセルピーヌ』
冥界へ誘拐された娘

ゼウス(ジュピテル)とデメテル(セレス)の娘ペルセポネ(プロセルピーヌ)が南イタリアのエンナの野で花摘みをしていると、大地が二つに裂け戦車が出現し、そこから出てきた男たちにさらわれてしまった.母親のセレスは驚き、あちこち探した挙句、太陽神ヘリオスが一部始終を見ていて、ネプチューンによって誘拐され、冥界に連れて行かれたことが分かった.しかもペルセポネの父でもあるゼウスが関わっていることを知って激怒し、彼女の仕事を放棄したので、食べ物が実らなくなり、飢饉に陥った.一方、冥界に連れて行かれたペルセポネは冥界の食べ物を口にすると二度と地上へはもどれないことを知っていたのだが、騙されてザクロ(結婚の象徴)を食べてしまう。それで冥界の住人になってしまった.ゼウスは神々を集めて協議した結果、一年の半分を地上で、残りの半分を冥界で過ごすということで決着がついた.
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『ペルセ』
ペルセウスの誕生秘話

アルゴスのアクリシオス王にはダナエという娘はいたが男子がいなかったので神託にお伺いをすると、ダナエの息子に王は殺されるだろうというものだった.彼は驚いて、ダナエを結婚させまいとして、地下室に閉じ込めてしまった.ところがダナエを気に入ったゼウス(ジュピテル)は、黄金の雨に変身して地下室のわずかな隙間から忍び込み、ダナエの上に降り注いで、身ごもらせた.こうして誕生したのがペルセウス(ペルセ)である.

ペルセウスの冒険

 激怒した王は二人を櫃に入れて海に流した.二人はセリフォス島の漁師に助けられ、二人を養育してくれた。この漁師の兄は王であった.ペルセウスが成長してこの宮殿に出入りするようになった頃、王の知り合いの娘の婚礼のお祝いに何かよいものはないかと訪ねられて、ペルセウスは自分ならゴルゴンの首を取ってこれると高言した.
 その途上で女神アテナがゴルゴン三姉妹の姉のグライアイ三姉妹を訪ねよと助言した.彼女たちを脅かして次に訪ねるニンフたちの居所を教えてもらい、ニンフたちのところへいって、ゴルゴン三姉妹の居所を教えてもらった.それだけでなく、空を飛べるサンダルと、姿を見えなくする帽子、ゴルゴンの首を入れるキビシスという袋までくれた.最後にはここまで同行してくれたヘルメス(メルキュール)が金剛の鎌をくれた.
 ゴルゴン三姉妹のうち唯一不死身でないメドゥーサを狙うことにしたペルセウスは武器を身につけて彼女の首を切り落とした.するとそこから天馬ペガソスとクリュサオルがでてきた.首をキビシスに入れて、全速力で逃れた.アトラスで一宿を願い出たが、断られたので、アトラスにメドゥーサの首を見せ、石にしてしまった.それがアトラス山脈となった.

アンドロメダを救うペルセウス

アトラスを後にしたペルセウスがアイティオピア(エチオピア)王国にさしかかると、海岸にアンドロメダ(アンドロメード)が縛り付けられていた。彼女に事情を尋ねると、国王ケペウス(セフェ)の子なのだが、母親のカシオペア(カシオープ)が自分のほうが海神ネレウスの娘たちより美しいと自慢をしたために、激怒した娘たちがポセイドン(ネプチューン)に訴えて洪水を起させたため国が荒れ果て.神託に伺いをたてると、アンドロメダを人身御供にして巨大な鮫に与えよというお告げで、こうして繋がれているのだということだった.すると巨大な鮫が現われたので、ペルセウスは王とアンドロメダの命を助ける代わりに結婚させるという約束を交わし、巨大鮫を打ち倒し、アンドロメダを解放した.するとアンドロメダの許婚であった国王の弟ピネウス(フィネ)が反乱を起し軍を引き連れてやってきた.両軍入り乱れて、戦況が国王側に不利なのを見ると、ペルセウスはメドゥサの首を敵軍に見せ、兵士たちを石にして、勝利を導いた.
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『アシスとガラテア』
ガラテイア

 海神ネレウスの娘である海の女神ネレイデスの一人であるガラテア(ガラテ)は、一つ目巨人キュクロプスの一人であるポリュペモス(ポリフェーム)から求愛されたが、拒絶した.そのためガラテアの恋人であった羊飼いのアキス(アシス)に岩を投げつけて押し殺した。ガラテイアはアキスを河に変え、自分は海に戻った.
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『オンファル』
オムパレの奴隷となったヘラクレス

数々の狂気に取り付かれ混乱に陥ったヘラクレスを見かねた女神アテナに気絶させられたが、正気に戻ったヘラクレスは自殺しようとするが、アテナイ王テセウスに救われる.アポロンの予言地デルフォイで神託を求めると、近隣のミュケナイ王エウリュステウスに12年間奉仕して罪業に報いるようにということだった.そうして彼は12の難業と言われる数々の功績をあげるが、見初めた女性との婚礼のいざこざで再びアポロンの神殿に行ったが、今度はおお暴れしてアポロンと格闘までする荒れようだった.ゼウス(ジュピテル)が雷霆を投げつけて引き分け、罰としてリュディアの女王オムパレのもとに奴隷として三年間奉公することになった.ここでも悪人や怪物退治で功を挙げた.ヘラクレスの素性を知ったオムパレが夫婦となったという神話もあるし、ヘラクレスが女装して糸つむぎなどの仕事をし、オムパレがヘラクレスのなりをしていたという神話もある.
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『テゼ』、『メデ』
イアソンと金羊毛皮

 イアソンはテッサリア地方の東のイオルコスの王アイソンの子で、次の王位継承者であった.アイソン王とかなり年の離れた異父弟ペリアスが、幼少のイアソンが跡を継ぐまでと騙して王座を奪った.身の危険を感じたイアソンは両親とはなれてペリオン山中に隠れ、ケンタウロス族の賢者ケイロンについて武術と学問を学んだ.イアソンはよい若者になると山を下りて叔父ペリアス王に王位の継承を要求した.王はコルキス国にある金羊毛皮を取ってきたら王位を譲ると難題を吹っかけてきた.イアソンはそれを受けて金羊毛皮を探す大冒険に出ることになった.

アルゴナウタイの挑戦

 イアソンは船を建造し、櫂の数に合わせて50人の英雄を募集した.それに応じてヘラクレス、テセウス、サラミス王テラモン、ペレウス兄弟(アキレウスの父)、名歌手オルフェウスたちが集まった.この船はアルゴー丸と名づけられ、女神アテナから贈られた樫の木(人の言葉を話す不思議な木)を舳先につけた.
エーゲ海を北上し、女しかいないリムノス島で一年間の歓待の日々を過ごした後、トラキアのサルミュデソスでは盲目の王ピネウスに自分たちを苦しめる怪鳥ハルピュイアの群れを退治してくれたらボスフォラス海峡で無事に通過する方法を教えると持ちかけられ、北風の神ボレアスの息子ゼテスとカライスがこれを退治して、その秘策を教えてもらった.先に鳩を飛ばし、一端閉まった大岩が再び開くのに合わせてそこを通過した.こうして目当てのコルキス国に到着した.

王女メディア

 ところがコルキス王アイエテスはただでは金羊毛皮をくれず、凶暴な二頭の牡牛をくびきに繋いでくれればという条件が出された。いよいよ猛牛との戦いの日の夜明け前、イアソンを一目見て恋していた王女メディアが、決して牛の角に傷つけられることのない特別に調合した薬草をこっそりイアソンに渡したのだった.おかげでイアソンは闘いに勝利した.メディアは父王の先手を打って、イアソンたちに金羊毛皮のありかを教えて、彼らがそれを手に入れると、イアソンとともに出奔した.ところが王の艦隊に阻まれて脱出できない.それを救ったのは再びメディアであった.彼女はイアソンに、和解すると見せかけて弟を呼び、弟を八つ裂きにして海に捨てれば、王は追って来れないと教えた.こうして父を裏切り、弟まで犠牲にしたメディアのおかげで、イアソンたちは帰還の途についた.

イアソンとメディアの逃避行

 航路に迷った彼らは舳先につけた樫の木の指示によって、魔女キルケのお祓いを受けに行ったり、名歌手オルフェウスのおかげでセイレーンの歌声に対抗して打ち勝ったりして、四ヶ月ぶりにイオルコスに戻ったが、叔父は王位を譲ろうとしないので、メディアがペリアスを騙して大釜で煮殺した.それでも王座はイアソンのものとはならず、逆にそこにいることができなくなり、二人でコリントスへやってきた.その後10年の間に彼らのあいだには二人の子どもができて、幸せだった.
 コリントス王クレオンには、グラウケという一人娘しかなく、しかも周辺にはイアソンをしのぐ英雄がいないので、王はイアソンに妻子を捨ててわが娘と結婚して王位を継承してくれないかともちかけた.イアソンはその話にのり、メディアに子どもを残して国外に出て行くように勧めた.メディアは逆上したがそれを押し隠してそれに同意したふりをした.メディアは王女グラウケに形見の品として金銀彩錦の衣を贈った。ところがそれを身にまとうと突然炎をあげてグラウケと娘を助けようとした王の二人を焼き殺してしまった.急を聞いたイアソンがメディアのもとにかけつけると、そこには刺し殺したばかりの二人の子どもを抱えた形相凄まじいメディアがいた.驚愕するイアソンを尻目に、メディアは有翼の竜に引かれていずこへともなく去っていった.
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『アルセスト』
妻を身代わりにしたアドメトス王と
王妃を死神から取りかえしたヘラクレス

 イオルコス王国の近くにペライという王国があり、アドメトス王がいた.彼はイオルコスのペリアスの娘アルケスティスと結婚したがったが、それには戦車をライオンと猪で一緒に曳かせて走らせられることという難題がついていた.かつてアドメトス王に世話になったことのあるアポロンはライオンと猪を調教した車を彼に用意してやり、そのおかげでアドメトス王はアルケスティスを妻とすることができた.
 ところが結婚後まもなくして王は若死にする運命であることが分かった.再びアポロンが肩入れをしてくれて、運命の三女神から、誰か身代わりになれば王は死なずにすむという約束をとってやった.ところが王の身代わりになって死んでもいいというものは誰も出てこなかった.両親でさえ命を惜しむくらいだから.結局、若妻のアルケスティスが身代わりになってくれた.
 アルケスティスが身代わりになって死んだ直後、ヘラクレスがこの宮殿に立ち寄った.話を聞いたヘラクレスはすぐさま死神を追い、格闘の末、アルケスティスを死神の腕から奪い返して、王のもとへ連れ帰った。
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鹿に変えられたアクタイオン

アポロンの息子のアリスタイオスとハルモニアの娘のアウトノエにはアクタイオンという息子がいた.彼は成長すると狩に熱中するようになり、テーバイの山野を猟犬を引き連れて駆け回っていた。途中で喉が渇いたので、森の泉に出かけた。泉の近くまで来たとき、泉で水浴びをしているニンフたちのなかに狩猟の女神アルテミスを見てしまった.アルテミスは「私の裸を見たと、皆に言いふらすがよい」と言ったかと思うと、泉の水を彼にかけた.するとアクタイオンは鹿に変身してしまった.純潔の女神でもあるアルテミスは人間に裸身を見られた恥辱に耐えられなかったのだ.アルテミスはアクタイオンの猟犬をけしかけて鹿になったアクタイオンを襲わせた。アクタイオンは体を引き裂かれてこときれた.
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ディオスクーロイ=ゼウスの息子たち

 カストルとポリュックスはディオスクーロイ=ゼウスの息子たちと呼ばれることが多い。というのは彼らがゼウス(ジュピテル)とレダのあいだに生まれた双子だからである。彼らの姉妹には、クリュタイムネストラとヘレネがいる。
 この二人はドーリアの英雄として数々の武勲をたてている。妹のヘレネがテセウス(テゼ)にさらわれたときに、彼女を救いにアッティカに遠征するし、イアソン(ジャゾン)の指揮のもとに、アルゴナウタイの一員として遠征にも参加している。それゆえローマでもスパルタでも、武勇と兄弟愛の象徴として崇められた。
 彼らは、従兄弟たちと、その婚約者をめぐって争い、カストルは命を落とし、ポリュックスは傷を負った。ポリュックスは父ゼウスによって天界に運ばれると、自分だけが不死身になりたくないと言って、カストルも天界に引き戻してもらった。オペラ『カストルとポリュックス』では、二人とも同じ女性を愛しながら、ポリュックスがカストルのために冥界に下ることを承認するという話は、台本作家ベルナールの創作である。
 二人の出生に関しては、よく知られた異説がある。それによると、レダはスパルタ王家のテュンダレオス王の妻で、二人のあいだにはクリュタイムネストラとカストルを、白鳥に変身したゼウスとのあいだにポリュックスとヘレナを産んだ。

参考文献ルネ・マルタン監修『図説ギリシャ・ローマ神話文化事典』(原書房)
楠見千鶴子『ビジュアル版ギリシャ神話物語』(講談社)

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