『アルシオーヌ』

Alcyone

台本/ラ・モット
音楽/マラン・マレ
ジャンル/音楽悲劇
初演/1706年
再演/19年30年41年

解説

1635年にパリで生まれたマラン・マレ(上の絵)は、ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の名手として有名で、師であったサント・コロンブとの師弟関係を描いた映画『めぐり逢う朝』(マレをジェラール・ドパルディユーが演じていた.実際の演奏はジョルディ・サヴァール)があるほど.10歳で叔父が助任司祭をつとめる教会の聖歌隊に入隊し、そこで音楽家としての基礎教養を習得した.その後、ヴィオールをサント・コロンブに、作曲をリュリに師事する.彼のヴィオール曲集第一巻は、師であるリュリに捧げられている.1679年に宮廷音楽家となり、1728年に死去するまでに、音楽悲劇(『アルシード』『アリアーヌとバッキュス』『セメレ』)のほか、五巻にわたるヴィオール曲集を手がけた.

プロローグ

舞台はトゥモル山を表す.水がめに乗った河の神々やナイアーデスがその山に取り付き、一種の滝を形作っている.トゥモルがパンとアポロンの間で声のコンクールが行われることを知らせる.パンは牧神やドリュアデスたちと登場し、アポロンはムーサたちを引き連れて登場する.パンは戦を歌い、アポロンは平和を歌う(これはスペイン継承戦争の示唆であり、当然ここではアポロンはルイ14世を指している).アポロンにはエコーが加勢する.審判役を務めるトゥモルはアポロンに軍配をあげる.アポロンは自分の勝利を祝して、平和と幸福の新しい時代を世界に与えたいと考えて、ムーサたちに、嵐を静めて海を平定したアルキュオンたち(伝説上の鳥)の話をするように求める.

第一幕

舞台はトラキアの国王セイクスの宮殿で、その端は神々のための一角となっている.セイクスはアイオロスの娘アルシオーヌ(アルキオーネ)との婚礼の祝いの準備をしている.だが、セイクスの友人であるペレもアルシオーヌを愛しており、婚礼の準備を苦々しい思いで見ている.トラキアのかつての支配者を先祖に持つ魔術師のフォルバスは二人の婚礼を妨害するのを手伝ってもいいとペレに申し出る.だがペレは祖国から追放されたときにセイクスに助けられたことを忘れることができず、苦しんだ末、諦めようとしている.フォルバスは女魔術師のイスメーヌと一緒に婚礼をぶち壊しにしてもいいと、執拗に主張する.
アルシオーヌとセイクスがやって来て、愛の言葉を交わす.セイクスはペレもその喜びに加わらせようとするが、彼のため息に驚く.アルシオーヌは従者たちを呼んで、歌とダンスで、彼らの愛を祝福させる.
婚礼の神の神官長が花飾りをつけた松明を持つ従者たちと現れる.彼はアルシオーヌとセイクスをを前に婚礼の儀式を行う予定だ.これが済めば、二人は夫婦となる.だが突然、地響きがして、大地が口を開け、そこから怒りの神たちが出てきて、松明を取り上げると、それで宮殿に火を放つ.一同は逃げる.

第二幕

舞台は、人気のない恐ろしい場所で、フォルバスとイスメーヌの洞窟の入り口.イスメーヌが、婚礼の邪魔をされたことで神々のご機嫌伺いに国王がやってくると告げる.国王は彼らが婚礼を台無しにした張本人だということを知らないのだ.国王がやってくると、二人は身を隠す.
セイクスはアルシオーヌとの婚礼が台無しになったことを嘆く.フォルバスとイスメーヌに気づくと、二人に神々に頼んで彼の宿命を緩和してくれるように頼む.イスメーヌは結婚を諦める、アルシオーヌを忘れるように勧める.国王の怒りを前にして、二人は国王の願いに同意する.
魔術師の一団とともに、彼らは悪魔に呼びかける.冥界の情景がプリュトンやプロセルピーヌとともに現れる.フォルバスとイスメーヌは彼らの願いを聞き届けてくれるように懇願する.フォルバスは恍惚状態になると未来が明かされるのを見る.フォルバスは見たままをセイクスに伝える:叫び声が聞こえ、クラロスにいるアポロンに助力を請わない限り、セイクスはアルシオーヌを失い、死ぬだろう.セイクスはすぐに出発するが、実はそれが彼の不幸を早めることになるのだとフォルバスはイスメーヌに打ち明ける.

第三幕

舞台はトラキアの港で、船の出帆の用意ができている.ペレは、愛と同じようにその静けさによって人間たちをひきつけ、嵐によって死滅させる海を前にして、愛の苦悩を歌う.フォルバスがペレに、セイクスを遠ざけたから、アルシオーヌがペレのもとに戻ってくるだろうと告げる.だが幸福になっても罪人になることを望まないペレを説得することにはならない.
水夫たちの一団が船にやってきて、順風を吹かせてくれるように懇願した後、歌ったり踊ったりして船に乗り込む.
アルシオーヌはいくらセイクスが訳を話しても一緒に行かせてくれと懇願する.だがセイクスは拒否する.ペレに気づいたセイクスはアルシオーヌを彼に委ねる.アルシオーヌの涙にもかかわらず、彼は船に乗り、出発する.アルシオーヌはネプチューンと父アイオロスの加護を祈り、気を失う.ペレが彼女に意識を取り戻させようとするが無駄である.アルシオーヌはセイクスの声を聞いたと思い、意識を取り戻す.

第四幕

舞台はジュノンの神殿.アルシオーヌは恋人と別れ別れになったことで納得できないでいる.愛の神に彼を返してほしいと懇願する.アルシオーヌがジュノンの神殿に捧げようと決心した生贄の用意がなされていることを、セフィーズがアルシオーヌに知らせる.ジュノンの神殿の女神官がアルシオーヌの願いをジュノンに祈願する.女神官たちが祭壇の周りを踊りながら、火の中に香を投げ入れる.甘美な音楽が聞こえ、アルシオーヌは眠気にとらえられて、神殿の階段に座って眠ってしまう.すると眠りの神が夢の神々に伴われて降りてきて、ジュノンから命じられたことを実行すると告げて、他のものたちを遠ざける.
眠りの神が夢の神々に命じて、アルシオーヌに、嵐の海と難破している船を見せる.夢の神々が溺れかけている水夫の姿で、夢の神の一人であるモルフェウスがセイクスの姿で登場する.セイクスは波間に沈みながらアルシオーヌにそなたのことが心残りだと叫ぶ.海が消え、ジュノンの神殿が再び現れる.
アルシオーヌははっと目覚めると、苦しみのあまり、セイクスに再び会えるなら、その代償として自分の命を奪ってもいいと、ジュノンに懇願する.

第五幕

舞台は夜の闇に覆われ、海まで続くセイクスの庭園.アルシオーヌはセイクスの死を知って自分も死のうとする.彼女の苦しみと、ペレを疑わない純真な心を見て、ペレは彼の罪深い愛を打ち明け、セイクスの出立は自分がフォルバスによって仕組ませたことだと告白する.そして復讐のために自分を殺してくれと彼女の前に身を投げる.だがアルシオーヌはペレから手渡された剣で自分を突き刺そうとする.セフィーズに制止され剣を取り上げられる. セイクスの父であるフォスフォールが星となって降りてきて、アルシオーヌにセイクスが戻ってきて、二人は結ばれることになっていると告げる.アルシオーヌにはこのような予言が信じられない.ペレは自らに死を与えるためにアルシオーヌの前から姿を消すことを選ぶ. アルシオーヌは今か今かと夜明けを待つ.日が差してくると、芝生の上に波によって打ち上げられた人間がいるのに気づく.セイクスだと分かり、いったんは気を失うが、意識を取り戻すと狂ったようになり、セイクスの剣を取って、自ら命を絶つ. ネプチューンが海から現れ、二人の恋人たちに命を返すと告げる.そしてこれからはアルキュオンたち(アルシオーヌの血から生まれた伝説上の鳥たち)が嵐を静める力を持つことになると知らせる.セイクスとアルシオーヌが生き返り、彼女の血からアルキュオンたちが生まれる.ネプチューンが海の神々に二人の恋人たちを祝福して歌うように命ずると、トリトンやネレイデスによるディヴェルティスマンとなる.アルシオーヌとセイクスが永遠の愛を誓い、海の神たちが彼らの栄誉を祝福して歌う.

ディスコグラフィ

ERATO 2292-45522-2
オーケストラ/Les Musiciens du Louvre
指揮/マルク・ミンコウスキー
アルシオーヌ/ジェニファ・スミス
セイクス/ジル・ラゴン
ペレ/フィリップ・ユタンロシェ
フォルバス/ヴァンサン・ルテクシエ
イスメーヌ/ソフィー・ブラン

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