『豪華な恋する者たち』
Les Amants magnifiques

ジャンル/コメディ・バレ
初演/1670年
台本/モリエール
音楽/リュリ

 1670年2月7日から数回にわたってサン=ジェルマン=アン=レーにて上演された。この作品は一般の観客向けには公演されず、テクストもモリエール死後の1682年の『全集』で初めて公開された。初演のときにはネプチューンとアポロンは予定通りルイ14世が踊ったが、これ以降彼は踊るのをやめた。それはバレ・ド・クールの終焉を意味する。
 このコメディ=バレは、第三幕間劇を構成するパストラルを中心として入れ子構造をなしている。ルイ14世や宮廷の人々がサン=ジェルマンに設営された舞台で上演されるこのコメディ=バレを見ており、テッサリアの女王をはじめとする人々がそこで演じられるさまざまなスペクタクル(パストラル、ダンス、パントマイム、ピュティア競技)を鑑賞し、とりわけ第三幕間劇ではこのパストラルの登場人物たちはさらにその中ほどに挿入された「恋人たちのいさかい」というパストラルを鑑賞する。つまり四重の入れ子構造ということになる。

第一幕間劇

さまざまな楽器が心地良い音楽を奏でると、それを合図にして幕が上がり、広大な海が真っ先に目に飛び込んでくる。海の両側には大きな岩が四つあり、それぞれの頂きには、川の神が、これらの神々に付き物の装飾品の上に肘をついている。岩の下のほうには、両側に一二の[海神]トリトンが控えており、海の中央には、キューピッドが四人、それぞれイルカにまたがっている。その後ろには風の神アイオロスが小さな雲に乗り、波の上空を漂っている。風の神アイオロスは、風に向かって「立ち去れ」と命じる。キューピッドも、トリトンも、川の神も、アイオロスに同調する。すると、海は静まり、波間から島が現れる。八人の漁師が、真珠貝や珊瑚の枝を手にして、海底から姿を現す。漁師たちは、ダンスで観客の目を楽しませると、それぞれ山石に僚り、川の神のド手に座る。すると合唱隊が、一海の神一ネプチューンの来訪を告げる。ネプチューンはお付きの仔たちと踊り、漁師、トリトン、川の神らも、ネプチューンのステップにあわせて、さまざまな仕草をしたり、真珠の装飾を施したほら貝を吹いたりする。この一連のスペクタクルは、求婚者の王子の一人が、二人の姫君[姫とその母親]の海上散歩にあわせて企画した豪勢な見せ物である。(臨川書房版『モリエール全集』第8巻より)

第一幕(舞台はテッサリア、甘美なテンピ渓谷)

 ソストラートはエリフィル姫に恋をしているが、身分違いの恋だと思い悩んでいる。エリフィル姫の道化を勤めるクリティダスがそれを知って、恋の手助けをしようと持ちかける。
 エリフィル姫の母女王のアリスティオーヌはイフィクラートとティモクレスを招いて、姫の心を奪うようにともちかけるが、彼らがどんな豪勢な催し物をして姫の歓心を引こうとしても彼女はのってこない。女王は姫が二人をどのように見ているのかを調べるようにソストラートに命じる。
 エリフィル姫と彼女の侍女のクレオニスが登場。クレオニスはしぐさによってどんなものでも表現するパントマイムのダンサーを姫に見せる。

第二幕間劇

三人のダンサーによるパントマイム。それを見た姫は彼らを雇い入れることにする。

第二幕

エリフィル姫のところへクリティダスがやってきて、ソストラートが姫に恋しているが、身分違いの恋ゆえ、悩んでいることを話す。姫のほうもソストラートを思っている。そこへ女王の使いとしてソストラートがやってくる。姫がどちらの王子を結婚相手として選ぶかを聞きに来たというと、姫はソストラートの意見を聞きたいといい、ソストラートは姫の結婚相手に値する人間はいないと言う。そこへ女王はじめ二人の王子たちがやってくる。ディアナの森で催しがあるから行こうと誘う。

第三幕間劇

舞台は森、ここに女王さまは誘われたのである。女王さまに敬意を示してニンフが歌を歌い、女王さまを楽しませるために、小さな歌劇をお目にかける。その歌劇の主題は次のようなものである。ひとりの羊飼いが友人のふたりの羊飼いに嘆くには、好きになった羊飼いの娘に冷たくされているのだという。ふたりの友人はその羊飼いを慰める。そこへその羊飼いの娘がやって来たので、三人の羊飼いは隠れて彼女を観察する。娘は恋の嘆きの歌を歌うと、芝生に横になり、甘い眠りに落ちる。恋する羊飼いは、友人を手招きして、娘に近付き、美しい娘をじっと眺める。恋する羊飼いは、娘の眠りを妨げないようにとあらゆるものに呼びかける。娘は目を覚まし、その羊飼いが足元にいるのを見ると、どうして自分を追いかけまわすのかと嘆く。しかし、羊飼いがずっと自分のことを想い続けていることを考えると、羊飼いの気持ちを受け入れてもよいという気になる。そこで、ふたりの羊飼いの友人たちの前で、その羊飼いに愛されてもいいと娘は告げる。そこヘサテユロスがふたりやって来て、娘の心変わりを嘆き、フラれたことにショックを受けて、酒に慰めを求める。(臨川書房版『モリエール全集』第8巻より)

第三幕

 一同が集まっている場で、女王は姫にそろそろ意中の人を明かすようにと促すが、姫はソストラートの意見に従いたいと述べ、女王も同意する。ところがソストラートは暗に自分が姫を愛しており、それゆえその任ではないと拒否する。そこで占星術師のアナクサルクが占うことを提案するが、これもソストラートの否定的意見のために流れる。

第四幕間劇

 舞台は洞窟。そこに女王と姫が入る。それぞれ片手にたいまつを持った八つの彫像が、変化に富んだダンスを披露する。

第四幕

 洞窟の中で、女王は姫に本心を言うように促す。姫は結婚を急がせないでほしいという。そこへヴィーナスが四人の小さなキューピッドを従えて降りてくる。ヴィーナスは女王に「おまえの命を救ったものを娘婿とするのです」という意思を明らかにする。これを聞いた女王は、一番近い神殿にお参りして、神々の意思に従うことを告げようと言う。
 ところがこれは占星術師アナクサルクとその息子クレオンの仕掛けで、ヴィーナスも偽者。アナクサルクはより多くの贈り物や約束をしたイフィクラート王子のほうに荷担するつもり。彼の策略とは、その晩に散歩をする女王を手下に襲わせ、それをイフィクラート王子に助けさせて、ヴィーナスのお告げどおりに「女王の命を救ったものを娘婿」にさせようというもの。
 いよいよ望まない結婚をせざるを得なくなったと思っている姫はソストラートに自分の気持ちを打ち明けるが、ソストラートも喜ぶばかりでどうしようもない。姫はすっかりふさぎこんでしまう。クレオニスがダンサーを呼ぶ。

第五幕間劇

 四人のパントマイム役者が姫君の不安にあわせたしぐさやステップを披露する。

第五幕

 偶然の出来事から、女王の命の恩人はソストラートになり、姫は大喜びする。ところが二人の王子は怒りを爆発させる。女王はピュティア競技を見ようと提案する。

第六幕間劇(ではピュテイア競技が厳かに行われる)

 舞台は大広間で、円形闘技場のようになっている。奥には大きなアーチ状の入り口が開いており、そのアーチ上には、幕で覆われた祭壇がある。遠景には、生け賛用の台が見える。ほとんど裸でそれぞれ肩に斧を担いだ六人の男たちが、生け賛を捧げる司祭として、ヴァイオリンの演奏にあわせて柱廊から入って来る。その後に生け賛を捧げる祭司役の歌手がふたりと巫女役の歌手ひとりが続く。(臨川書房版『モリエール全集』第8巻より)

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