『アンドロメード』
Andromède

ジャンル/悲劇
初演/1650年
台本/ピエール・コルネイユ
音楽/ダスーシ

1647年にパレ=ロワイヤルでイタリア・オペラの『オルフェオ』が上演された。このオペラは当時宰相をしていたマザランがフランスへのオペラ導入を目指して国王ルイ14世にオペラを紹介するために上演させたものであった。このオペラの上演のために舞台装置家のトレッリがヴェネチアから招聘された。彼は当時の最新式の舞台装置をフランスに紹介し、オルフェオを中空で移動させ、人々の度肝を抜いたのであった。フランス語のオペラをというマザランの要請を受けて創作されたのがコルネイユの『アンドロメード』であった。完成後にフロンドの乱が勃発するなどして、初演は1650年になった。
『アンドロメード』はイタリア・オペラの『オルフェオ』を真似て、フランス語オペラの創始をめざして作られたとはいえ、オペラにはなっていない。その理由は、台詞が歌われない、つまりレシタティフもエールもないからである。歌われたのは合唱部分だけであった。しかも、通常の台詞がアレクサンドランで書かれていたのに対して、合唱の歌詞は音楽に合わせるべく自由韻文詩が使われていた。しかし合唱に関しても、こうした詩形式上の工夫にもかかわらず、歌詞が聞き取りやすいようにということで、その音楽(音楽はダスーシDassoucy1605-1677が担当)は同じ旋律形を全声部が歌うホモフォニー形式で書かれていたり、その歌詞も登場人物の台詞の繰り返しであった。要するに、音楽があまり重要性を持っておらず、音楽劇と言えるようなものではなかった。ただ、『オルフェオ』と同じように、スライド式張物による迅速な場面転換や宙乗りなどの仕掛けが多用されることで、驚異によって目を楽しませ、音楽によって耳を楽しませる「第三のジャンル」として後に規定されることになるフランス・オペラの方向性を予告するものとなっていることは疑いない。

あらすじ

プロローグ

中央に深い洞窟があり、その先に海が見える巨大な山の上空に悲劇の女神メルポメーヌが宙乗りによって登場し、同じく宙乗りによって、四頭の馬に引かれた光り輝く車に乗って進む太陽神を止めて、国王ルイ14世を楽しませるために準備した豪華な催し物を見ていくように勧める。女神は太陽神の車に乗り込み、ルイ14世の栄光を称える歌を歌い、さらにそれを他の地でも広めようと立ち去る。

第一幕(→画像へ)

舞台はエチオピア王国の首都の広場。かつてエチオピアの国では、女王のカシオープが娘のアンドロメードの美しさを海のニンフたちに自慢したために彼女たちの怒りをかい、大津波や怪物の襲撃を受けて多くの民が死んだ。神託を受けて、アンドロメードの婚礼は延期され、怪物の怒りが静まるまで毎月娘が生贄として差し出されてきた。今度はアンドロメードがその生贄として指名されたというのだ。国王、女王、アンドロメードの結婚相手のフィネ、ペルセがどうすべきか議論しているとき、天上からヴェニュスが降りてきて、神々はアンドロメードとフィネの婚礼を許し、花を添えるために、式に参列することになったと告げる。

第二幕(→画像へ)

舞台は彫像やジャスミンの木に縁取られ、中央にオレンジの木でできたアーケードのある庭園。アンドロメードがニンフたちと婚約者のフィネのための花飾りを作っているが、その会話の中から、ペルセがアンドロメードのことを愛しているらしいことが分かる。フィネは小姓にアンドロメードが太陽を凌駕すると歌わせる。フィネが戻ってきて、フィネの小姓とアンドロメードのニンフの歌が合唱とともに二人の婚礼を祝福しているところへ、フィネの従者がやってきて、アンドロメードが最後の生贄として選ばれたと告げる。父であり国王であるセフェも許婚のフィネも絶望を口にするが、アンドロメードはけなげにも内面の苦悩を押し殺して、みんなのためになるのなら潔く生贄になろうとする。フィネが神々に対する冒涜的な言葉をはいているとき、天上からエオールが風の神とともにやってきて、アンドロメードを連れ去る。ペルセが彼女を助け出すと国王に約束する。

第三幕(→画像へ)

舞台は両側に切り立つ岩山をもつ入り江。手前は岸辺になっており、そこにアンドロメードの母親一行がいる。彼女たちの見ている前で、風の神に連れ去られたアンドロメードが岩山の足元の水辺にくくりつけられる。それを見た母親のカシオープはアンドロメードをこのような目にあわせることになった神々に対する侮辱の罪は自分にあるから、自分を罰してくれるように嘆願する。それがかえって神々の怒りを刺激することになり、怪物を呼び寄せることになる。そこへペガサスに乗ったペルセが上空に現われる。合唱が勇敢なる者こそアンドロメードを手に入れるにふさわしいと歌っている間、ペルセは怪物と戦い、勝利する。ペルセが父ユピテルの命令として、アンドロメードをもとの場所に連れて帰るようにいうと、風の神たちはそれに従って、アンドロメードを再び上空に連れ去る。一同が退場した後、ネプチューンのニンフたちが登場し、口々に無視された怒りを言い合っていいるところへネプチューンが現われ、復讐を誓う。

第四幕(→画像へ)

アンドロメードを助けたペルセはアンドロメードに自分を愛してくれるように求める。それを約束したアンドロメードのところへフィネがやってくる。自分がアンドロメードを救えなかったことについてフィネがあれこれ言い訳をするので、アンドロメードは命をかけて自分のために闘ってほしかったと不満を一気に爆発させる。愛されているかどうかの確信もないのに愛するネレのために命をかけた二十人の恋するものたちと、愛されていたのに愛する人が死んでも生き延びることを考えていたフィネを比較して、フィネが取った行動がいかに愛にそむくものであるかをアンドロメードは訴え、立ち去る。フィネはペルセと戦う決心をする。そこへジュノンが孔雀に引かれた豪華な車に乗って天空に登場し、彼にその庇護を約束する。一方、アンドロメードの両親やペルセたちは神殿に行って婚礼の儀式を執り行おうと喜ぶ。

第五幕(→画像へ)

アンドロメードが自分を捨ててペルセを選んだことに納得がいかないフィネはペルセに決闘を挑み、返り討ちに合う。国王、女王、アンドロメード、ペルセは神殿に行くが、その門はすべて閉じられていて、彼ら一同を不安にさせる。そのときジュピテルが光り輝く王座に座って天上から降りてきて、息子のペルセとアンドロメードの婚礼を認めると同時に、神の息子の婚礼として地上はふさわしくないから、一同を不死にすることを約束して天上に誘う。合唱とともに幕が下りる。

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