『アリシ』

Aricie

台本/ジャン・ピック
音楽/ルイ・ド・ラ・コスト
ジャンル/オペラ=バレ
初演/1697年

解説

ジャンルとしてはオペラ=バレエということになるのだが、同じ年に上演された『優雅なヨーロッパ』と違って、幕ごとに異なった登場人物が出て来るのではなく、一貫した登場人物と内容になっている。ある意味、ラ・モットの書いたオペラ=バレエのほうが特殊な形式を持っていたのであって、ピックのオペラ=バレエの形式がしばらく続く。その後、ラ・モットの創始した形式になっていく。ジャン・ピックは『四季』(オペラ=バレエ、1695年)や『ヴェニュスの誕生』(パストラル、1696年)などを書いたモラリストの台本作家であった。

プロローグ

マルシアスが歌う声はあらゆるものに生命を吹き込む力を持っており、「どんなに誇り高い美女も愛の支配に身を委ねる」ほどで、アポロンも私には勝てないと豪語すると、それを聞いていた牧歌的音楽を司るユーテルプ、悲劇的音楽を創始したメルポメーヌ、諸芸術を司るポリムニーが憤慨して、お前はいずれ罰せられると脅かす。そこにアポロンがやってきて、私を侮辱する者は最も恥ずべき懲罰を受けろと命じると、牧神とシルファヌスが来て、マルシアスを引っ張っていく。アポロンはミューズたちに世界で最も偉大な王のために祝福してくれと命じて立ち去ると、メルポメーヌはセーヌ川の河岸の住民たちに「地上でも冥界でも怖れられている英雄は、お前たちの安全のためにそれを(深い平和)を望んでいる」と言う。羊飼い娘がここでは愛の喜びが支配しているといい、「世界で最も偉大な王の新しい征服を歌で祝福しよう」と歌って終わる。
マルシアスというのはギリシア神話でアポローンと音楽を競い敗北したサテュロスである。

第一アントレ

舞台は、未知の島の王女(アリシ)のために田園的な祝祭が準備されている、心地よい場所の近くの森。
王子のフェルナンは愛し合っていたアリシに捨てられたと思っているが、未練を断ち切れずに、アリシのために準備されている祝祭の場にやってくる。それを見た従者のアルシープも二人の王女もアリシへの思いを断ち切って、浮気女に復讐しなさいと勧めるが、フェルナンにはそれができず、ウジウジしている。他方、アリシのほうでも、フェルナンが裏切ったと思っているが、愛する気持ちは捨てきれないでいる。フェルナンはアリシと再会し思いを打ち明ける。

第二アントレ

舞台は森に縁どられた野原。
アリシの従者のアルカスはアリシの侍女のエリーズを愛しているが、彼女のほうはアルシープを愛している。アルカスはエリーズに愛を訴えるがエリーズは冷たく突き放す。アルシープが来たので、アルカスは別れろと言うが、アルシープは拒否する。祝祭が始まり、ディヴェルティスマンとなる。

第三アントレ

舞台は愛の神に捧げられた神殿が見える森。
フェルナンとアルシープ主従が森で休んでいると、エリーズが一人で来たので、エリーズとアルシープは二人で森の中を散歩する。アルシープは誰も愛していないふりをして、恋愛に無関心でいることが一番の心の平和を保てるといい、エリーズは青春の今こそ愛に生きるべきだと主張する。それにいずれは愛の神に服従することになる、と。アリシはフェルナンと再会する。互いに愛し合っているにもかかわらず、断ち切った絆をもう一度復活させる気はないと言ってしまう二人であった。フェルナンは永遠にアリシを失ったと絶望する。

第四アントレ

舞台はアリスタンドルの洞窟。
アリシは「永遠に彼の心が変わらないという保証が欲しい」から、どんな宿命が待ち受けているか魔術師のアリスタンドルに相談に行く。アリスタンドルは精霊たちに呼びかけて、知恵を伝える神秘の衣をもってこさせる。

第五アントレ

舞台はアリスタンドルの洞窟の隣。
フェルナンも同じように自分の愛の将来を占ってもらおうと思ってフロランドという魔術師の洞窟にやって来る。ここでもエリーズ、アルシープ、アルカスといった低い身分の男女の恋のさやあてが繰り広げられる。フェルナンが来るのを見たアリシは物陰に隠れて、フェルナンの本心を知ろうとする。フロランドはその愛は諦めろと助言したので、絶望したフェルナンは剣を引き抜いて自死しようとする。それを見たアリシが出てきて、フェルナンを愛していることを告白する。一同で愛の喜びを祝福する。

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