『ベレロフォン』

Bellérophon

台本/トマ・コルネイユ
音楽/リュリ
ジャンル/音楽悲劇
初演/1679年
再演/1705年18年28年73年

解説

1677年に上演されたラシーヌの最後の悲劇『フェードル』の影響がはっきりと伺える作品である。フェードルと同じように,愛の情念に捉えられて理性も何もなくしてしまう女王という主題がここにも見られる。これ以降,これまでのキノー=リュリのオペラにつきものだったジャンルの混合(=ユーモア的要素)が排除されることになったことも,この作品の特徴である。

プロローグ

舞台はパルナッソス山で,山頂にアポロンが九人のミューズたちに囲まれて座っている。アポロンがルイ14世によって地上に平和がもたらされたことを称えて歌う。そこへバッキュスやパンもやってきて,声を合わせる。バッキュスはこの英雄を称えにインドの地からやってきたと歌えば、パンもこの英雄がいればこそ森や平原も平和でいられる,いまこそ愛が支配すべきときだと歌う。それに続いて,羊飼いが愛を称える歌を歌い、それにパンやバッキュスが続くと、アポロンは愛の歌は止めにして、フランスの英雄にパルナッソスを生み出した出来事を芝居にしてお見せしようと提案する。

第一幕

舞台は古代小アジア南西部の一地方リュキア国の首都バタール。アルゴス国の女王ステノベはかつてベレロフォンを愛していたが,彼から無関心な態度を取られたことに侮辱されたと感じて,ベレロフォンがステノベに言い寄ったと夫の国王プレトゥスに信じ込ませたのだった。その結果,国王プレトゥスはベレロフォンを自分の宮廷から遠ざけるために、リュキア国に追いやってしまったのだった。それはベレロフォンから名誉も命も奪うことになるはずだった。その後、プレトゥスは亡くなったので,女王ステノベはかつての獲物を自分のものにしようとリュキア国の宮廷に来ている。
いまも誰にも無関心をもっているように見えるベレロフォンに王位という捧げものをちらつかせれば,ベレロフォンが自分になびいてくるかもしれないとステノベは思っている。そこへリュキア国のフィロノエ姫がやってきて,父たるリュキア国王が自分のために宮廷に来ている客人の中から夫となるべき人を選んでくれると言う。ステノベの巧みな言葉に促されてフィロノエ姫はついに自分が愛しているのはベレロフォンだと告白してしまう。そしてステノベに自分の愛が成就するように援助して欲しいとまで心を打ち明ける。それを聞いたステノベは絶望感と屈辱感の虜となり,復讐を誓い、リュキア国の王子で自分を愛しているアミソダールが魔術に詳しいから,彼をつかってやろうと考える。そこへリュキア国王がやってきて,娘の夫にベレロフォンを選んだとステノベに知らせる。また,ベレロフォンにもこのことを知らせるとともに、ベレロフォンが制圧したアマゾネスとソリメスという二つの国の捕虜たちも解放する。

第二幕

舞台はリュキア国の宮殿近くの壮麗な庭園。フィロノエ姫が愛の願いが成就されて,ベレロフォンと結ばれる喜びを歌っている。そこへベレロフォンも加わって、互いに愛の誓いを歌う。フィロノエ姫が去ると、入れ替わりにステノベが現われ、ベレロフォンに愛を告白するが,ベレロフォンは冷たく立ち去ってしまう。冷たくされれば冷たくされるほど、ステノベのベレロフォンへの愛はつのり,しかもそれは激しい憎しみへと変わっていく。

ステノベ
私を置いていくの、残酷な人、待って!ああ,彼が逃げていくわ!
私の愛は恥ずかしさに直面して,それをどうしようもない。
お前たちは私を苦しめる辛さを癒してはくれないのね、
無力な恨みが弱々しくぶり返してくるけど,
私の愛の炎はあの恩知らずの軽蔑を肥やしに燃え上がるのよ。
愛の炎は消えるか,もっと激しくなるかのどちらか。
幸せすぎる愛は弱まるものだけど,
不幸な愛はつのるものよ。

すべてを失うことを覚悟したステノベは,自分を愛している,リュキア国の王子で,魔術師のアミソダールを呼び,自分を愛し仕えたいのなら、ベレロフォンを後世にずっと言い伝えられるような恐ろしいやり方で亡き者にしてやってほしいと頼む。アミソダールは魔術師たちを呼び集め、呪いによって,地獄から恐ろしい三頭の怪物(龍,獅子、泥の形をしている)を呼び寄せる。

第三幕

怪物に襲われて土地が荒廃し,民衆が嘆き悲しむのを見て、リュキア国王は天の怒りはなぜ国王である自分を処罰しないのかとステノベに不満を述べる。ステノベは,天の怒りはすべてベレロフォンが原因であり、彼にしか神々の怒りを鎮めることはできないと説明する。国王はリュキア国の守護神であるアポロンの神託をえようとする。ベレロフォンは自分がこの怪物と戦って平穏を取り戻すと勇むが,フィロノエ姫に止められる。三人はアポロンの神殿に行き,神託をえられるように,犠牲司祭に頼む。犠牲司祭がアポロンに呼びかけると、金色の彫像の姿をしたアポロンが現われ、「ネプチューンの息子の一人が怪物を倒してくれるが,その代償としてフィロノエ姫をこの息子に嫁がせること」という神託を継げる。神託の内容に打ちのめされたベレロフォンとフィロノエ姫は動揺するが,フィロノエ姫は自分が犠牲になることを徐々に決意していく。

第四幕

舞台は荒涼とした岩山で,その一つには三つの洞穴が穿たれている。町も森も燃え盛る阿鼻叫喚の光景を見て、これこそが愛するステノベの望んだことだ、これでこそ自分の愛は叶えられると狂ったように叫ぶアミソダール。ステノベの侍女アルジがアミソダールの狂気を諌めているところへ怪物がやってくる。ナパイア(谷間の森のニンフ)とドリュアデス(木の精のニンフ)と森の神々が登場して、この惨事のために荒廃した森を嘆く。死を覚悟して怪物と戦うというベレロフォンに国王は命を大事にせよと諭す。一緒にネプチューンのところへ犠牲を捧げに行こうと言う国王にベレロフォンは最後の別れをする。一人残ったベレロフォンのところに天上から女神パラスが降りてきて助力を申し出る。二人は天上に上がる。民衆の嘆きの中、ベレロフォンがペガサスに乗って現われ(上の絵),暴れまわるキマイラに二度,三度と急襲をかける。ついにキマイラが死に絶えると,ベレロフォンはペガサスに乗って空中を三回まわって天空に消える。そして民衆の歓喜の声。

第五幕

舞台は両側に楕円形の階段を持つ宮廷の前庭。キマイラを打ち倒したベレロフォンをパラスが連れてくるのを一同で待っている。リュキア国の民衆に向かって、国王が先ほどのアポンの神託にあったネプチューンの子とはベレロフォンのことであったと知らせると,一同が歓喜の声をあげる。フィロノエ姫も神託と自分の願いが一致した喜びを歌う。そこにステノベが現われ,これほどの不幸をもたらした惨禍の原因がすべて,ベレロフォンを恋焦がれて激情にはしった自分にあることを告白する。そしてすでに毒をあおったから命はもういくばくもないと告げた後,冷酷な仕打ちをした愛の神に対して憎悪の言葉を吐き出して,息を引き取る。その激しさは痛ましい。そこへ女神パラスがベレロフォンを連れて凱旋してくる。一同による歓喜の歌で終わる。

ディスコグラフィ

レーベル/Aparte
オーケストラ/レ・タラン・リリック
指揮/クリストフ・ルセ
ベレロフォン/Cyril Auvity
ステノベ/Ingrid Perruche

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