『レ・ボレアード(北風の神々)』

Les Boréades

台本/ルイ・ド・カユザック(?)
音楽/ジャン=フィリップ・ラモー
ジャンル/音楽悲劇
コンサート形式での初演/1964年
舞台形式での初演/1982年

解説

『レ・ボレアード』は『ゾロアストル』から五年たってオペラ座がラモーに新作を依頼した作品である。多くの点から、台本はラモーのお気に入りの台本作家であったルイ・ド・カユザックのものだろうと考えられているが、確証はない。このオペラ創作時点ではすでにカユザックは亡くなってから五年たっていたなど、不明な点が多い。しかもリハーサルの大詰めになって、ラモーがなくなり、この年の秋のシーズンの幕開けは急遽カンプラの『タンクレード』に差し替えられることになった。その後お蔵入りとなって眠りつづけ、200年たって初めて聴衆の前に姿を見せた。『レ・ボレアード』を指揮したジョン=エリオット・ガードナーは、『イポリトとアリシ』でオペラ・デビューを果たしたラモーは、その豊穣な音楽によって当時の聴衆に驚きと衝撃を与えたが、最後にこのオペラを書くところまで、当時の聴衆の好みに合わせて妥協を繰り返し、保守化していったと述べ、それをモンテヴェルディになぞらえているが、私も同感である。『イポリトとアリシ』に見られるような、合唱、二重唱、三重唱、エールの、そしてそれを支えるオーケストラの可能性をとことんまで追及した、張り詰めた驚異的な音楽は、もうここにはない。

第一幕

舞台は、バクトリアーヌ国[現在のアフガニスタンに位置する]の女王アルフィーズの宮廷。彼女は、彼女を愛している二人の北風の神の王子、カリシスとボリレアスのどちらかを夫として選ばなければならない。彼女は侍女のサミールに、この夫選びにたいする混乱した気持ちや、風の神ボレアスの意志どおりに従うことにたいする嫌悪感を打ち明ける。というのは彼女の心が選んだのは、北風の神ではなく、アバリスという出生も分らぬ異邦の男だからだ。
 侍女のサミールは、バクトリアーヌ国の王座の正当な継承権を要求するボレアスの怒りから、アルフィーズを守ろうとする。心の冷たい二人の王子はアルフィーズにどちらかを選ぶように強要する。喜びの神々とグラティアエたちの愛らしい一団がやってくる。これに励まされて、アルフィーズは、彼らの強要を拒否し、アポロンがみずから彼女の運命を決めてくれるのを待つことにする。彼女は、結婚の至福を大洋上の静かな日々の喜びに、情念の苦しみを突然の嵐の危険に比較して見せる。

第二幕

舞台はアポロンの神殿。アルフィーズを献身的な心から愛するアバリスは、彼女が自分を愛していることを知らない。アポロンの神官長であるアダマスが、アバリスはアポロン神の子であることを示唆し、彼はまず神々の血筋を代表するのにふさわしいことを示さねばならないことを観客に教える。
 アバリスはアルフィーズを愛しているのだが、自分の出生を知らないので、自分の愛には希望がないと思っている。このことをアダマスに打ち明ける。アダマスは彼がこの愛に忠実でありつづければ、勝利を手にすることになるだろうと予言する。
 アルフィーズは自分の王国をボレアスが破壊するという恐ろしい夢を見て、この神殿にやってくる。彼女はアバリスに助けを求めにやってきたのだ。アバリスはアポロンの助けを約束し、自分の愛をほのめかす。彼女も彼に応えるのだが、そこへボレアードの二人の王子がやってきて、この告白は途切れてしまう。
 喜びを抑えつつ、アバリスはアポロンの栄光を祝福するために人々を集める。ニンフが自由という最高の宝を称えて歌うと、ボレアードの王子たちは冷たい愛を自慢する。オリシーがさらわれて、第四幕で起こる破局を予告するが、運良く、愛の神が降臨して、アルフィーズの愛への援助を申し出て、彼女に金の矢を与える。これは愛の神の力の象徴なのだ。

第三幕

アルフィーズが一人で現れ、例の恐ろしい夢が引き起こす恐怖と愛の魅力のあいだで揺れる心を歌う。まだ自分の出生を知らないアバリスは北風の神々ボレアードの血筋ではないためアルフィーズを妻とすることができないことを嘆く。だがアルフィーズは今度こそアバリスへの愛を公言する。王国の住民たちも王子たちも彼女の気持ちを翻すことはできない。ついにアダマスが王を選ぶように求めると、アルフィーズは王位を放棄して、アバリスと結婚すると表明する。彼女は愛の神から与えられた金の矢をアバリスに渡す。王国の住民たちはそれを祝福するが、ボレアードたちは激怒する。二人の王子はボレアスに復讐を求める。周囲に嵐が起こり、アルフィーズは空中にさらわれる。

第四幕

嵐が荒れ狂い、住民たちは恐ろしさにうめく。ボリレアスだけが勝利し、アルフィーズへの復讐を喜ぶ。荒廃した王国ではアバリスがさらわれた女王に涙する。王国を救うためにアダマスはアバリスに、復讐に立つか、アルフィーズへの愛を断念するか、どちらかを選ぶように求める。絶望の淵でアバリスは金の矢を自分に突き刺そうとするが、アダマスがこの武器は別の使い方もできることを思い起こさせる。アバリスは復讐に立ち、アポロンに援助を呼びかける。だがそれに応えたのは、歌とパントマイムのムーサであるポリムニーで、彼女は時刻の神々、四季の女神たち、ゼフィロスたちをつれて、ボレアスの気持ちを変えさせようとする。

第五幕

ボレアスが風の神々にもう一度王国を荒廃させるように命ずるが、神々は「ただの人間」であるアバリスの声を優先し、ボレアスの命令には耳を貸さない。自分の無力に激怒したボレアスはアルフィーズへの復讐し、彼女を苦しめてやろうと考える。脅かされても、鎖につながれても、アルフィーズはアバリスへの愛を変えようとしない。ついにアバリスが彼女を助けにやってくるが、王子たちの辛らつなからかいを受ける。彼は二人を黙らせるために金の矢を使う。
 まもなくアポロンが降臨し、アバリスが自分とボレアスの子孫のニンフとのあいだの子であることを明かす。アルフィーズとアバリスの婚礼が一同の喜びの中で祝福される。バクトリアーヌ国では愛と喜びを祝う。

ディスコグラフィ

ERATO 2292-45572-2
オーケストラ/English Baroque Soloists
指揮/ジョン=エリオット・ガーディナー
アルフィーズ/ジェニファ・スミス
アバリス/フィリップ・ラングリッジ
カリシス/ジョン・エイラ
ボリレアス/ジル・カシュマーユ
ボレアス/ジャン=フィリップ・ラフォン

OPUS ARTE OA 0899 D
オーケストラ/Les Arts Florissants
指揮/ウィリアム・クリスティー
アルフィーズ/バーバラ・ボニー
アバリス/ポール・アニュー
カリシス/トビー・スペンス
ボリレアス/ステファーヌ・デグー
ボレアス/ローラン・ナウリ

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