『カドミュスとエルミオーヌ』

Cadmus et Hermione

台本/キノー
音楽/リュリ
ジャンル/悲劇
初演/1673年
再演/1690年91年
1703年11年37年

解説

リュリによるフランス・オペラの第一作目である。リュリが台本作家として選んだのは,フィリップ・キノーである。キノーは,17世紀をとおして最高の人気を博したトマ・コルネイユの悲劇『ティモクラート』に肉薄するほどの人気を,『ストラトニス』と『アストラート』(1664年)によって得ていた。ボーサンによると,キノーがオペラの台本作家として優れていたのは,オペラ台本を書く以前から彼の芝居台本の特徴として,筋の進行を止めて登場人物に感情や行動を説明させる癖があったことを指摘している。つまりレシタティフで進められていた筋が止められ,エールになるというオペラ台本に求められる特徴をキノーの台本がもっていたということである。
 『カドミュスとエルミオーヌ』は,次回作の『アルセスト』が論争の対象になったために,こちらに比べると議論の対象になることがほとんどないが,『アルセスト』以降に確立する主人公たちの言語としてのレシタティフと,二次的な役の人物たちやディヴェルティスマンの言語としてのエールという割り当てがまだ明確ではなく,レシタティフもほとんど歌うような,旋律豊かな音楽が付けられている。ただ歌詞はまだキノーが音楽劇に歌詞を書くことになれていなかったのか,やたらと凝った表現が多い。
 モリエールの『町人貴族』もDVDで出しているLe Poeme HarmoniqueによるDVDが出ている。言葉遣い,身振り,ダンス,舞台美術,衣装,いずれをとっても当時のものが再現されているようで,素晴らしいの一言。

プロローグ

「プロローグの主題は,恐ろしい蛇ピトンの誕生と死が記述されているオウィディウスの『変身物語』の第一の書の第八話に由来する。ピトンは洪水の後大地に残った泥土から太陽神がその熱によって生み出したもので,あまりに恐ろしい怪物になったので、アポロン自ら破壊せざるを得なくなったのである。」(台本より)
舞台は田舎で、両側にあばら家が,中央奥には沼が見える。空は輝く夜明けで、そのうち日の出となり、輝く太陽が地平線に姿を見せる。その間に序曲が終わる。牧人たちの女神パレス,森と山の女神メリース,羊飼いの神パンがニンフや牧人たち・村人たちと一緒に登場して,生きとし生けるものの生みの親である太陽神を称える。突然の大音響とともに舞台は闇になり、蛇の姿をした羨望の女神が,冷酷な風神たちと登場して,太陽神の支配を打ち破り、大地を恐怖で満たそうと歌う。ところが炎の矢が厚い雲に風穴を開け,雲を溶かし、そのために羨望の女神は泥沼に逃げ込み、風神たちも逃げ去る。そして再び明るい空が戻り、一同は太陽神の勝利を歌う。そこに太陽神が車に乗って降りてきて、太陽神が運行している間は美しい日々が続くだろう,みんなで楽しみなさいと告げて、退場する。歌ったり踊ったりのディヴェルティスマンでプロローグは終わる。

第一幕

舞台は庭園。カドミュスは誘拐された妹のウロープ(エウロペ)を探して2年前にテュロス国を出立した。彼は同行している二人の王子に,マルス神の娘で,怪物の巨人に囚われの身となっているエルミオーヌに恋をしてしまい,彼女を解放したいと告白する。カドミュスは自分がエルミオーヌを愛していることを彼女に知らせるためにアフリカ人たちが提供するディヴェルティスマンを利用したいと従者のアルバスに伝える。エルミオーヌが従者や乳母と登場する。乳母は自分の宿命を受け入れ、カドミュスのことは忘れるように諭す。棕櫚の木のまわりでアフリカ人たちのダンスや愛を祝福する歌が歌われる。エルミオーヌは退出しようとするが,彼女を約束されている巨人が彼女を呼び止め,二人は約束されていることを思い出させる。王子たちの制止にもかかわらず,カドミュスが二人の間に割って入ろうとするので,ジュノンがカドミュスを押しとどめる。ところがパラスは反対にエルミオーヌを助けるように彼を促す。結局、カドミュスは愛を取ることにする。ジュノンは脅かすが、パラスは彼に保護を約束する。

第二幕

舞台は宮殿。カドミュスの従者のアルバスがカリテスにカドミュスはドラゴンを退治に行く決心をしたと知らせる。カドミュスに同伴せねばならないアルバスはカリテスに愛を告白し,彼女が自分に無関心でいることをなじる。そこへアルバスを恋しているエルミオーヌの乳母がやってきて,彼を引きとめようとするが、アルバスは立ち去る。乳母はカリテスにその怒りをぶちまける。ドラゴン退治への出立を決心したカドミュスと彼を引きとめようとするエルミオーヌの別れの場面。エルミオーヌが泣いているところへ,キューピッドが登場し,彼女を安心させて、カドミュスを助けに飛び去る。

第三幕

舞台は砂漠で洞穴が見える。アルバスとテュロス国の二人の王子は不安でならないが,カドミュスに命じられたそれぞれの仕事をしようとする。アルバスは二人のアフリカ人と残ってカドミュスがマルス神のために行う犠牲祭の準備をする。水汲みをしようとしているとドラゴンが現われ,二人のアフリカ人を連れ去ろうとする。カドミュスがやってきてドラゴンと戦い,殺す。カドミュスが立ち去ったあとに,それまで隠れていたアルバスが出てきてカドミュスが死んだと思い、ドラゴンにとどめをさそうとする。そこへ二人の王子が戻ってきて,ドランゴンが死んでいるのを見つけて驚く。カドミュスが戻ってくると,マルス神への犠牲祭が司祭長や司祭たちの歌や踊りを交えて行われる。マルス神が登場し怒りを静めたかったら,カドミュスは他にも手柄も立てる必要があると告げ、冷酷な妖精たちに命じて,祭壇をこなごなにしてしまう。

第四幕

舞台はシャン・ド・マルス。カドミュスはドラゴンの歯を撒かねばならない。カドミュスはアルバスにエルミオーヌを見に行くように指示する。そこへキューピッドが現われて,カドミュスを助けることを約束する。カドミュスが意を決してドラゴンの歯を撒くと、地面から武装した兵士たちが生まれ,カドミュスに向かってくる。カドミュスはキューピッドからもらったざくろのようなものを彼らに投げつけると,彼らは互いに殺しあうようになった。彼らのうち生き残った兵士がその武器をカドミュスの足下において忠誠を誓ったので,彼らをエルミオーヌに送り、カドミュスはテュロス国の人々を集めに行く。その途上で,カドミュスは巨人に出会い、エルミオーヌを断念しろという巨人の脅しを拒否したので、戦いになる。そこへパラスが登場し、バックルの閃光で巨人たちを石にしてしまう。カドミュスとエルミオーヌが再会し、勝利と喜びの歓声をあげているところに,ジュノンが来てエルミオーヌを連れ去ってしまう。彼女は復讐をしに現われたのだった。

第五幕

舞台はパラスがカドミュスとエルミオーヌの婚礼のために準備した宮殿。ジュノンがエルミオーヌを天上に連れ去ってしまったので、エルミオーヌがいなかったら幸せになれないとカドミュスが嘆いているところへ,パラスが現われ,ジュピテルとジュノンが和解したから,エルミオーヌを地上に連れ戻すだけでなく、彼らも二人の婚礼に出席することになったと知らせて,カドミュスを喜ばす。天上が開いて、エルミオーヌが神々に付き添われ、婚礼の女神ヒュメナイオスと並んで降りてくる。二人が中央に並ぶと,婚礼の祝宴が始まる。ジュノン、ヴェニュス、マルス,パラス、キューピッドが次々と二人に贈り物をする。そして一同の歌と踊りの中で幕を閉じる。

ディスコグラフィ

音楽監督/ヴァンサン・デュメートル
舞台監督/バンジャマン・ラザール
舞踏振り付け/ギュドラン・スカンレッツ
カドミュス/アンドレ・モルシュ
エルミオーヌ/クレール・ルフィリアートル
アルバス・パン/アルノー・マルゾラーティ
愛の神・パレス/カミーユ・プール

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