『ダルダニュス』1744年版

Dardanus

台本/ラ・ブリュエール
音楽/ラモー
ジャンル/音楽悲劇
初演/1739年
再演/1744年60年68年

解説

 1739年の初演時には、前評判は良かったが、いざ蓋を開けてみると、評価は散々で、謝肉祭までもたせようというラモー派たちの呼びかけにもかかわらず、11月の第1回上演から翌年1月までの26回の上演で打ち切られるという結果に終わった。1回目の上演が終わってから、ラモーとブリュエールは少しづつ手直しそしていたが、それでもこの結果だったため、第1幕と第2幕はそのまま残すが、第3幕から第5幕まで完全に書きなおす、音楽もつくり直すという決断をして、1744年の再演を迎えた。魔法の棒、怪物、眠っているダルダニュスの空中旅行、ヴェニュスの神託、ヴェニュスの最後の登場など、39年版にあった多すぎるほどの驚異の場面は殆どなくなった代わりに、第四幕のダルダニュスとイフィーズの葛藤、第五幕のダルダニュスとトゥセの葛藤など劇的な深みが増している。週三回の割合で、4月23日から6月9日まで、合計で22回の上演が続けられた。
台本作家のラ・ブリュエールは、台本作家と外交官の二足のわらじをはいた人で、22歳のときに『愛の神の旅行』(1736年)というオペラ=バレの台本を書いてデビューし、ヴォルテールに称賛された。彼が『ダルダニュス』を書いたのは25歳のときであった。その後、1744年からはフュズリエとともに『メルキュール・ド・フランス』の編集長になった。外交官としては、大使に任命されたニヴェルネ公とともにローマに行っている。40歳で天然痘でローマで死んだ。

第一幕

フリジア国王トゥセの娘イフィーズは敵のダルダニュスを心ならずも愛するようになったことを嘆いている。ダルダニュスとの戦で倒れた戦士たちの墓地に一人来て、死者の魂に自分の理性を取り戻させてくれるように祈っている。そこへ父のトゥセがやってきて、宿敵ダルダニュスを打ち倒す最強の助っ人、隣国の王子アンテノールの到着を知らせる。アンテノールがやってきて、勝利を約束する。アンテノールとトゥセは戦の神々に庇護を祈り、勝利を誓い合う。だが戦の士気を萎えさせるかのように合唱が愛の神こそ栄光と喜びの両方をもたらしてくれると歌う。ダルダニュス打倒に燃え上がる国王たちを見てイフィーズの心はちぢに乱れる。心に無垢と平和を取り戻したい彼女は魔術師のイスメノールに相談しようと考える。

第二幕

舞台は人気のない荒涼としたところ。魔術師のイスメノールの棲家に、ダルダニュスがやってきて敵の娘イフィーズへの愛を告白する。イフィーズがここにやってくることを知っており、先回りしてきたのだ。彼女の心を知りたいのだ。イスメノールは魔術によってダルダニュスにイスメノールの姿を与えてやる。
そこへイフィーズを愛し、彼女を手に入れるために、ダルダニュス討伐の約束をした隣国の王子アンテノールがやってくる。イフィーズへの恋路がライバルによって邪魔立てされるのかどうかを知りたくてやってきたのだった。だがそこへイフィーズがやってきたので、アンテノールは立去る。
イフィーズは相手がダルダニュスとも知らず、ダルダニュスへの理性に反した激しい愛を打ち明け、この愛を消し去って欲しいと頼む。イフィーズが自分を愛していることを知ったダルダニュスは本当の姿を表してしまう。イフィーズは驚いて、逃げてしまうが、ダルダニュスはイフィーズの愛を知って浮かれる。彼はフリジアの人々に捕らえられる。

第三幕

舞台はトゥセの宮殿の前庭。オリジナル版では、彼女の魂の混乱を明かし、ダルダニュスが囚われたことを私たちに知らせるイフィーズのモノローグで始まっていたが、改訂版では、アンテノールがダルダニュスが囚えられたのに、イフィーズがダルダニュスに心奪われていることを嘆く。そこに民衆がダルダニュスを殺せと押し寄せる。国王トゥセが民衆をさとして引き下がらせる。アンテノールは密かにダルダニュスを殺害しようと画策する。第三幕の最後はディヴェルティスマンで民衆がダルダニュスだ捕の喜びを歌と踊りで表現する。

第四幕

舞台はダルダニュスの牢獄で、ダルダニュスが囚われの身を嘆いている。この素晴らしいモノローグをラモーは何度も和声の表現力の力の例として彼の理論的著作のなかで引用しているくらいに自信をもっていたようだ。そこへ魔術師のイスメノールが現れると輝かしい場所に変わる。イスメノールは「神々がお前を抑え込んでいた腕を引っ込めようとしている。だがお前の鉄鎖を断ち切ることで、お前の解放者は厳しい宿命の犠牲者となるだろう」と予言する。イスメノールが立ち去ると、イフィーズがダルダニュスを牢獄から解放しようとやってくる。ダルダニュスは自分が解放されれば、代わりにイフィーズが死ぬことを知っているので、立ち去ろうとしない。二人の押し問答。そこへ裏切りを暴くアンテノールがやってくるが、倒れて、連れ去られる。ダルダニュスは守衛の剣を奪い去って、出て行く。第四幕が終わっても幕間のあいだずっと「戦の物音」が幕間音楽として演奏される。この戦の音は純粋に交響曲風に展開されて、ラモーの最高傑作の一つと言われる。

第五幕

トゥセの陣営とダルダニュスとの戦いの結果、荒廃した宮殿でイフィーズが父の身の上を案じている。戦に勝利したダルダニュスのもとへ囚われの身となった国王トゥセが連れてこられる。ダルダニュスはトゥセに敬意を示して、引き続き統治するよう提案するが、囚われの身となった恥辱にトゥセは拒否して、殺せと要求する。だがダルダニュスは反対にトゥセに剣を渡して、ダルダニュスを殺すようにと言う。押し問答のはてに、ヴェニュスが降りてきて、愛の神の勝利を知らせ、最後のディヴェルティスマンとなる。

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