『エリード姫』
La Princesse d'Elide

ジャンル/コメディ・バレ
初演/1664年
台本/モリエール
音楽/リュリ

1664年5月6日から13日まで、ヴェルサイユ宮殿のすばらしさを宮廷の貴族たちに印象づけるために、ルイ14世の指示にもとづく最初の大掛かりな祝典が行われた。コンサート、バレ、芝居、花火などさまざまなスペクタクル的要素によって構成されたこの祝典は、『魔法の島の悦楽』と名付けられたが、それはアリオストの叙事詩『狂乱したオルランド』に由来する。魔女アルシーヌの魔法にかけられ、魔法の島に幽閉されて、ありとあらゆる悦楽に興じた騎士ロジェとその仲間たちのように、ルイ14世と貴族たちはひと時の夢を生きたのである。その二日目に上演されたのが、この『エリード姫』である。これはロジェらがアルシーヌのために芝居という設定で上演された。

あらすじ

第一幕間劇

 夜明けのレシに続いて、猟犬係たちの喜劇的なやりとり、そしてダンス。

第一幕

 エリード国王は、娘のエリード姫が年頃になっても狩りに夢中で、恋に関心を示さないのを心配して、娘が結婚する気になってくれるようにとの願いから、宮廷にイタク王子、メセーヌ王子、ピール王子を呼び寄せた。
 メセーヌ王子とピール王子はうるさいほど姫に付きまとい、逆に姫から冷たいあしらいを受けるのだが、同じく姫を恋しているイタク王子は、その様子を見て、告白の勇気をくじかれている。イタク王子がそれを王子の教育係アルバートに相談しているところへ、モロン(モリエールが演じている)がイノシシに追われて逃げてくる。
 モロンはエリード姫の道化を勤めているが、エリード姫から一目置かれているので、イタク王子は同郷のモロンに頼んで、エリード姫に自分の気持ちを伝えてくれるように頼んでいた。愛の神キューピッドを馬鹿にして、恋をしないのを誇りにしているエリード姫の気持ちをつかむには、いろいろと難しいコツがあると、モロンが説明しているところへ、エリード姫の一行がやってくる。
 エリード姫は自分がイノシシを退治するつもりだったのに、他の王子たちに先を越されてかんかんに怒っている。これを見たイタク王子は、普通とは逆の自分なりのやり方で姫の心をつかんで見せる話す。

第二幕間劇

 王子を見送ったモロンは一人になると、愛しい羊飼いの娘フィリスの名前を叫ぶと、それが滑稽なこだまとなって帰ってくるのを楽しんでいる。そこへ熊が現れる。びっくり仰天したモロンは、木に登って助けを呼ぶと、棍棒や槍をもった農民たちが現れ、戦いが始まり、熊はしとめられる。

第二幕

 イタク王子が考え出したやり方とは、エリード姫を無視することだった。他の王子たちとは違って、イタク王子は、エリード姫と同じように、自分は恋とか結婚には全く関心がないという態度を示して、エリード姫に見向きもしない。一人でも自分に見向きもしない王子がいるのを許せないエリード姫は、王子を振り向かせようと懸命になる。しかしもし王子が自分を好きになっても、その気持ちにこたえるつもりはないのだ。
 馬車競争が行われることになり、メセーヌ王子とピール王子は、エリード姫の歓心を買うために勝利したいと言うが、イタク王子は、自分は誰も好きになったことなどないから、自分の満足のためにだけに勝つつもりだと発言する。この言葉に姫はますます苛立ち、何とかしてイタク王子の心を向けさせたいと思う。

第三幕間劇

 モロンと、モロンが好きな羊飼いの娘フィリスとのやり取り。フィリスは歌が上手なティルシスのほうが好きで、モロンにつれなくする。
 フィリスが去ったところへ、歌の上手なサテュロスが現れる。モロンは彼に歌を教えてくれと頼む。サテュロスは一人で歌うだけ。モロンが「この馬鹿」と言うと、サテュロスも怒り出すが、けんかにはならないで、二人で踊る。

第三幕

 イタク王子が馬車競争に勝利を収めた。それを称えて、エリード姫はすばらしい歌とダンスを披露したが、イタク王子の相変わらず冷淡な様子に、姫は不安を感じ始める。やがてイタク王子が姿を見せると、姫は真剣な調子で話し掛ける。すると王子は、自分は誰も愛したことがなく、大切なのは自分の自由であり、姫も愛好している孤独と狩りの楽しみ以外には心動かされるものがないと告げる。

第四幕間劇

 フィリスが好きなティルシスに歌を歌ってくれるように頼んでいる。そこへモロンが現れ、フィリスにいろいろ話し掛けるが、ティルシスの歌を聴きたがっているフィリスはうるさがって怒る。モロンは俺にだって歌えるといい、フィリスは聞かせてという。モロンは、おまえのつれなさのためにおれは死んでしまうと歌う。フィリスは自分のために死んでくれるくらい好きになってくれるなら、心から愛するだろうという。モロンは、じゃあ死んでやろうとナイフを持ち出して、フィリスの気を引くが、最後には「そんなわけないだろう、バーカ」といって、あざ笑う。

第四幕

 エリード姫は他の王子を愛しているといえば、イタク王子の本心を引き出すことができるのではないかと期待して、実はメセーヌ王子を愛していると打ち明ける。するとイタク王子のほうも、姫の従妹を見初めたので、エリード王に結婚を申し込むつもりだと告げる。思いがけない言葉に、エリード姫はすっかり度を失い、すぐさま従妹のところに行き、イタク王子から結婚の申し出があっても、受け入れないように懇願する。エリード姫はモロンに当り散らし、「ということはお姫さまはあの方が好きってことですよ」と本心を見破られてしまう。

第五幕間劇

 クリメーヌとフィリスが「恋をすれば、激しい苦しみが待っている」という考えと「恋の情熱ほど美しいものはない」という考えのどちらが正しいんだろうと話している。結局二人は恋をしてみるのが一番の近道だと歌う。

第五幕

 エリード姫が父の国王に会いに行くと、イタク王子が連れ立っているのが見える。姫は国王のそばに来ると、足下にひれふし、イタク王子と従妹の結婚を認めないでほしいと頼む。王はそれを約束し、さらにイタク王子が他の姫のものになるのがいやなら、エリード姫自身が彼と結婚するほかないだろうと告げる。姫は情熱的で真情を吐露するように、王子はそれを望んでいないと答えたのを見て、イタク王子は偽りの姿をすべて捨てて、本心を打ち明ける。姫は王子との結婚を承知する。
 国王は、メセーヌ王子とピール王子にも姫の従姉妹たちとの結婚を提案すると、彼らもそれを承諾する。宮殿の中は喜びに満ち溢れる。

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