『トーリドのイフィジェニ』

Iphigénie en Taulide

台本/ギヤール
音楽/グルック
ジャンル/悲劇
初演/1779年

第一幕

トーリド(タウリス)の岸辺.嵐がやってこようとしている.ディアーヌの寺院の木立.トロイヤ戦争の五年後,犠牲として自らの死を選んだが,ディアーヌによって助けられ,スキト(スキュトス)の地に連れてこられたイフィジェニは,ここトーリドで女司祭として生きてきたのだ.嵐の襲来とともに,彼女自身の心にも嵐がわき起こる.それは,父アガメムノンを,彼の妻であり,イフィジェニの母であるクリテムネストルが殺す壮絶な光景だった.絶望した彼女は,自分にも死をと呼びかける.
  責め苦が自分に準備されているという強迫観念に打ち震えるスキュトの王トアスがやってきて,女司祭たちを集め,自分に向けられている危険を遠ざけるために人間の生贄を要求する.その時,兵士たちがやってきて,海岸で上陸に失敗した二人の若いギリシャ人を捕まえたと知らせる.トアスはこの二人を神に捧げる生贄にしようと考える.イフィジェニは絶望し,民衆は生贄の知らせを聴いて興奮する.
  若いギリシャ人というのは,イフィジェニの弟のオレストとその友人ピラードで,彼らはトアスの前に連れ出され,やってきた理由を問われるが白状しない.王は彼らに死を告げ,民衆は喝采する.

第二幕

ピィラードともにディアーヌの寺院に閉じこめられたオレストは,絶望感を告白し,友人を死なせることになったことで自分を責める.ピラードのほうは,死ぬまで一緒にいることができたと優しい言葉をかける.
  寺院の司祭がやってきて,彼らを引き離す.一人残されて怒りと苦悩に落ち込んだオレストのまわりに復讐の神々があらわ,彼の罪を責め立てる.<お前は母を殺した>.狂気のようになったオレストはクリテムネストルの亡霊を見たように錯覚する.それはイフィジェニだった.彼女はオレストからその後の出来事を聞き,彼女が見た夢が正夢であったことに動転する.父を母が殺し,弟が母を殺した.そしていま弟は死を宣告されている.祖国はもはやなく,両親もいない.だが,イフィジェニは弟の死者の魂を祝福する力を取り戻す.

第三幕

イフィジェニはエレクトルに自分の運命を知らせたいと思い,メッセージを届けさせるために,囚われの身の二人のうちのどちらかを逃げさせることを決心する.ピラードは,一旦は解放されても自ら命を絶ってしまうに違いないオレストを助けることも期待して,イフィジェニから頼まれた使命を引き受けることにする.

第四幕

ディアーヌの寺院の中.イフィジェニは自分に獰猛さを与えてくれるように,女神に懇願している.オレストが連れてこられる.死を観念して静かになったオレストに対して,イフィジェニは自分の手で彼を犠牲に処さねばならず,苦悩に打ち震えている.女司祭達がオレストを祭壇に連れていく.イフィジェニは彼女たちに支えられなければ,一歩も進むことができない.刀剣が手渡され,彼女が斬りかかろうとする,その瞬間,オレストがオーリドでのイフィジェニの死のことを口走り,イフィジェニはまさに自分が手に掛けようとしている若者が弟であることを知り,駆け寄る.
  だが,ピラードの逃亡を知ったトアス王がやってきて,早く処刑をするように要求する.イフィジェニは彼の前にいるのがアガメムノンの息子オレストであることを明らかにする.怒りにカッとなったトアス王はみずからオレストとイフィジェニを処刑に処そうとする.間一髪,ピラードがギリシャ軍を率いて到着し,トアス王を打ち倒す.ディアーヌが天上から現れ,スキュト人にオレストとイフィジェニを解放するように命ずる.神々の怒りの終わりと平和の統治を祝って,終わる.
[L'Avant Scene Opera, No 62を参照]

ディスコグラフィ

Radio France ERATO 245 003-2
オーケストラ/リヨン歌劇場管弦楽団
合唱/モンテヴェルディ合唱団
指揮/ジョン=エリオット・ガーディナー
イフィジェニ/ディアナ・モンタグ
オレスト/トーマス・アレン
ピラード/ジョン・アラー
トアス/ルネ・マシス

PAL 100 376
オーケストラ/チューリッヒ・オペラ・オーケストラ
合唱/チューリッヒ・オペラハウス合唱団
指揮/ウィリアム・クリスティー
イフィジェニ/ジュリエット・ガルスティアン
オレスト/ロドニー・ジルフライ
ピラード/デオン・フォン・デア・ヴァルト
トアス/アントン・シャリンガー

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