『イジス』

Isis

台本/キノー
音楽/リュリ
ジャンル/音楽悲劇
初演/1677年
再演/1704年17年32年

解説

オペラ『イジス』は,ルイ14世とリュドル夫人との浮気とそれに激怒したモンテスパン夫人(当時,ルイ14世の公然たる愛人)による復讐がモデルになっているといわれ、この作品のあとキノーは台本作家を解任されることになったという、いわくつきのオペラである。当時の人々はジュピテル=ルイ14世、ジュノン=モンテスパン夫人、イオ=リュドル夫人に置き換えて楽しんでいたのだろう。

プロローグ

舞台は名声の女神ペーメーの宮殿を表す。この宮殿はあらゆる方向に開かれているが、それは地上で起こる大事なことや、海上で起こる記念的なことについて、あるいは目の届き難いところで発見されたことの知らせを受け入れるためである。噂の神々と風聞の神々がこの女神と同じようにトランペットを手に持ち、世界のあちこちから群れをなして戻ってくる。そしてフランス国王は神に選ばれたのであり、その法に従うものは幸せだと歌う。そこへネプチューンが海の神々を従えて登場し、フランス国王は海上での戦いにも勝利したことをいたるところに知らせようと言う。だがミューズたちやアルテス・リベラレスたちが、平和の女神はまだ下りてくる勇気がないから、新たな祝祭をフランス国王の下で準備して、みんなで待とうと歌う。

第一幕

舞台はイナコス河が蛇行する平原。イエラックスは愛するイオが二人の婚礼を延期したといって彼女の心変わりを悲嘆している。友人のピラントがそんなことはないといくら慰めても、イエラックスの心は晴れない。そこにイオがやってくる。イエラックスはイオに悲嘆の思いを投げつける。イオはイエラックスのことを愛していると言うが、不吉な予感から婚礼の延期を申し出る。イエラックスとピラントが去って、ミセーヌと二人になると、イオはキューピッドの仕業でジュピテルが自分に夢中になっており、地上に降りてこようとしていると告げ、不安の気持ちを打ち明ける。そこへメルキュールがジュピテルの登場を知らせにやってきて、イオが他の人を愛しているからとジュピテルの愛を断ると、ジュピテルのために心変わりするのは決して恥とはならないと、彼女に心変わりするように要求する。そこでジュピテルが降りて来る。

第二幕

舞台が厚い雲に被われて暗くなる。それに驚いているイオのところへジュピテルが現われる、ジュノンに見られないように厚いくもで覆っているのだと説明し、イオに愛を告白する。だが、イオは他の者と約束を交わしていると言って、ジュピテルを拒絶する。ジュピテルがイオと押し問答をしているところへメルキュールがやってきて、ジュノンがまもなくやってくると告げる。逃げるイオを追ってジュピテルも退場する。メルキュールはジュノンの従者のイリスと二人きりになると、イリスに愛を打ち明ける。ちょっと喜劇的な二人のやり取りのあと、ジュノンが現われる。ジュノンがニンフの後を追いまわしているジュピテルにたいする怒りをぶちまけているところへ、ジュピテルが現われる。ジュノンは自分の新しい従者のニンフにイナコスの娘、つまりイオを選んだと告げる。イオを愛しているということを知られたくないジュピテルは、喜んだふりをして見せる。この幕の最後は、エベの庭園におけるディヴェルティスマンである。そこへイオが連れてこられ、エベからジュノンにお仕えするようにと知らされる。

第三幕

舞台は湖のそばの森の中にある百目巨人のアルゴスの住処。ジュノンの命令でイオはそこに閉じ込められ,アルゴスに監視されている。ジュピテルに愛されたために,ジュノンの激怒を買ってこのような仕打ちをされているのだとアルゴスはイオに教える。イオが閉じ込められているのを見て,イエラックスが相変わらずイオの心変わりを責めにやってくるが,イオはジュピテルに愛されていることをアルゴスに聞かされて、イエラックスは絶望する。そこに羊飼いに扮したメルキュールやシルウァヌスたちが登場し,アルゴスやイエラックスの前で,牧神パンとパンの愛を拒否し,彼に追われて湖に身を投げて葦になったシュリンクスの話しを劇中劇として上演する。悲しい結末を見て泣き出したアルゴスをメルキュールは杖の一突きで眠らせてしまう。そのあいだにメルキュールはイオを救い出そうとするが,イエラックスがおし止める。押し問答をしているうちにアルゴスが目を覚ましたので,メルキュールは再度杖の一突きでアルゴスを死なせ,イエラックスを猛禽にしてしまう。しかしそこへジュノンがやってきて,アルゴスを生き返らせ,激怒して,地獄から怒りの女神エリニスを呼び出して、イオに復讐させようとする。

第四幕

舞台はスキタイの凍てついた土地。怒りの女神エリニスに追われてイオがやってきたのは何かもが凍りついた極寒の地。イオはこんな苦しみを与えるよりは早く死なせてくれと懇願するが,聞き入れらない。エリニスは別の拷問を与えてやると,今度はカリブの鍛冶場に連れて行き、イオに燃え盛る灼熱の炎で苦しめる。イオはそれから逃れようとして高い山の上から海に身を投げるが,エリニスも彼女を追って海に飛び込む。舞台は変わり、運命に三女神パルカの洞窟になる。イオはパルカに速く自分の運命の糸を切って死なせてくれと懇願するが,エリニスがまだイオの苦しみは十分ではないと言い,パルカもジュノンを鎮めなければイオを死なせることはできないと断る。

イオ
全世界が熱愛するものを
愛することがこれほど大きな罪なのでしょうか?
パルカ
ニンフよ,もしお前が惨めな運命を終わりにしたければ,
ジュノンを鎮めよ。
それが運命の裁きだ。
それは変更できぬ。

第五幕

舞台はナイル川の河口付近の岸辺。エリニスに引っ張られるようにして海から出てきたイオが「あなたがいなかったら,あなたの愛がなかったら,ああ!/私はこんなに苦しむことはないのに」とジュピテルに早く自分を死なせて,この苦しみから解放してくれるようにと訴える。そこにジュピテルが降りてきて、いかに最高権力をもつジュピテルでも運命の神の法には逆らうことができぬと,どうにもできず,イオに同情を示す。そこへジュノンが現われ,ジュピテルと言い争いになる。言い争いのあと、二人はお互いの愛を誓うことで、イオは苦しみから解放され、ジュピテルによってイジスという名前を与えられて、神々の一員に迎え入れられることになる。

ディスコグラフィ

Lully ou le musicien du soleil, vol 7.
指揮/ユゴー・レーヌ
La Symphonie de Marais
イオ(イジス)/フランソワーズ・マセ
ジュピテル/ベルナール・ドゥルトレ
イエラックス/ベルナール・シュベール
イリス/イザベル・デロシェ

映画『王は踊る』の最後あたりで『イジス』の一部が出てくる。
といってもこの箇所は、プロローグなので、本編とは無関係だが。

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