『メデ』

Médée

台本/トマ・コルネイユ
音楽/シャルパンティエ
ジャンル/音楽悲劇
初演/1693年

解説

シャルパンティエは、その音楽家としての活動時期が、不幸にもちょうどリュリによるオペラ興行独裁の時期と重なったために、オペラ以外の宗教音楽にすぐれた作品を多く残しているが、オペラは公的に(つまり王立音楽アカデミーで)上演されたものとしてはごくわずかしかない。そのなかで最も知られているのがこの『メデ』である。トマ・コルネイユの詩は、キノーとは違って、行跨ぎが多いなど、けっしてオペラにふさわしいものとは言えない。初演にはルイ14世はじめ王族が出席し、好評であったが、12回の上演で打ち切られ、長い間忘れ去られていた。

プロローグ

舞台は滝のように連なった岩山に縁取られたひなびた場所.セーヌ川の周辺の住民たちや羊飼いたちが,ルイ14世を偉大な勝利者として称えると同時に、勝利の女神を招き、また栄光の女神やベローヌ(戦の女神ベロナで,軍神マルスの后)を連れてきてくれるように呼びかける。この三人の女神が下りてきて,ルイはフランスのためにその叡智を使ってきたし,戦を終わらせるために戦っていると称える。栄光の女神が,ルイが勝利の女神を必要としなくなっても,ルイと栄光の女神との愛は続くだろうし,嫉妬深い敵たちには邪魔だてはさせないと歌う.勝利の女神がルイによって戦は終わり平和が訪れるから、安心して愛の喜びを歌うように,羊飼いたちに勧める.羊飼いたちは勝利の女神が歌った歌を繰り返す.

第一幕

舞台はコリントの、凱旋門と彫像やトロフィーに縁取られた広場.メデのおかした犯罪にたいするテッサリア人たちの憎悪を避けるために、メデとジャゾンはコリントス国王クレオンの庇護をもとめてコリントスにいる.メデは侍女のネリーヌに、夫のジャゾンが自分を避けるようになったと嘆く。ネリーヌは、ジャゾンはコリントスの王女クレユーズと和解しようとしているだけだと言って、メデの猜疑心を抑えようとする。
ジャゾンがやってきて、クレユーズとの仲を疑うメデに、彼は子どもたちの安全を確保するために、コリントス国王を思いのままに動かすことができる王女クレユーズの好意を得ておくためだと説明する.ジャゾンは,彼女の好意をもっと確実にするために、メデが大事にしている服をクレユーズにプレゼントするように勧め、彼女は受け入れる。
メデが立去ると、ジャゾンはクレユーズを熱愛していることを、侍従のアルカスに告白する。だが激怒したメデの恐ろしさを知っているアルカスは、メデがそれを知ったらどんなことになるかと心配するが、それはジャゾンも承知の上である.
コリントス国王クレオンがやってきて、娘のクレユーズと婚約しているアルゴス国王子オロントの到着を知らせる.ファンファーレとともにオロントが到着し、クレユーズに対する愛からやってきたと述べる。クレオンはテッサリアとの戦いに勝利するための助力を求める.コリントス人やアルゴス人たちが彼らのもとに集まり、オロントの到着を祝福して、愛の神と勝利の女神の力を得て、人々を勝利に導いてくれと歌う.

第二幕

舞台は大きな門のあるホール。クレオンがメデに,追っ手に引き渡すことはしないから、ジャゾンを残して、他の所へ行くように頼む。メデとジャゾンの間の子どもたちはクレオンが王子として育てると言う.メデは抵抗するが、無駄である.彼女が犯した罪はジャゾンへの愛からしたことだと説明しても、クレオンの考えを変えさせることはできず、彼はメデの出立がコリント人たちの要求であると言うのだ.
メデは出立を決心し、子どもたちをクレユーズに託す。
クレオンとクレユーズ親子が集まり、メデが出立すれば、ライバルがいなくなって、クレユーズはジャゾンと結ばれると喜ぶ.ジャゾンが来ると、クレオンはメデが出立の決心をしたと告げる。クレユーズもジャゾンも多少後ろめたい気持ちがあるのか、お互いに愛こそ最高の喜びであると何度も確かめ合う。
アルゴス国の王子オロントがやってきて、クレユーズへの愛を表明し、これ以上返事を引き延ばさないで欲しいと言う。
愛の神と愛の神の囚人たちが行進をして、三人をめぐる愛の行方を歌う。

第三幕

舞台はメデの降霊術の場所.オロントがメデのところへ来て,もしメデがオロントとクレユーズとの婚礼を整えてくれたら,メデとジャゾンの身の安全を保障すると申し出る.だがメデは彼女の追放の原因は,ジャゾンとクレユーズ姫の愛にあり,メデがじゃま者になったからだと説明する.二人は二人をじゃま者あつかいにする不運な宿命に力を合わせて戦うことにする.
メデは自分の追放をジャゾンが認めたと知り、ジャゾンに自分を捨てるのかとなじる。ジャゾンは嵐を避けるための一時的な別れなのであって、すぐに再会できるからとメデを納得させる.メデは一人残ると,このような別れが,愛するジャゾンのために犯してきた数々の罪業の結果なのかと暗い気持ちにひたる.侍女のネリードからすべてはメデを追い出すための策略だということを知ってメデは激怒し、彼らに復讐を誓い、姫に贈ることになっているドレスを精霊たちにもってこさせる.またステュクス河の嫉妬の女神や復讐の女神たちに助けを求める。悪魔たちが地獄の鍋をもってきて,そこに葉を投げ入れて毒を作る。怪物たちが出てきたので、試しに毒を彼らに投げつけると,怪物たちは死ぬ。メデはドレスにその毒を塗る.メデはそれをもって立去り、悪魔たちも消える。

第四幕

舞台はクレオンの宮殿の前庭,奥には壮麗な庭園を表す。ジャゾンとクレユーズの侍女のクレオーヌがメデがプレゼントしたドレスを着たクレユーズの美しさを称えている.ジャゾンはクレユーズへの愛情がさらに強まったと言う.オロントがやって来たので,クレユーズは立去る。王子オロントは,自分を見てクレユーズが立去ったので,自分は嫌われていること,ジャゾンとクレユーズ姫が愛し合っていることを確信する.
オロントはメデにメデの疑いが当たっていたと告げる。メデは決してジャゾンをクレユーズの夫にはさせないと復讐を誓う.恐ろしいことにならなければいいがと心配する侍女を傍目に、メデは二児の母であることで気弱になってはいけないと自分に言い聞かせる.
国王クレオンが現われ、メデがまだ出発していないのを見て苛立ち、早く国から出て行くように急かす。メデがアルゴス王子とクレユーズの婚礼を見届けてから出発すると言うと,国王はこの国のことを決するのは自分だと答える。するとメデは突然,凶暴な態度を表す.国王は守衛たちにメデを逮捕させようとするが,メデは魔術の棒を一振りして,守衛同士を争わせ,そして逆に国王を取り囲ませる。美しい女性に化けた亡霊たちが現われ,踊りながら,守衛たちを魅惑する.メデが怒りの女神を呼ぶと,怒りの女神が松明をもって現われ、クレオンの前に進む。クレオンはあまりの恐ろしさに狂う.

第五幕

 舞台はメデの宮殿。メデは,ネリーヌを前にして,国王を狂わせることに成功したことを喜び,ジャゾンに対する復讐として彼の愛する子どもたちを殺そうと考える。だが罪のない子どもたちを本当に手にかけてもいいものかという迷いもあるが,その迷いを振り切る.
クレユーズが来て,コリントスの将来を案じて,メデの憐憫の情に訴えかける.彼女は,ジャゾンとの結婚を断念するというメデが出した条件を受け入れる.クレオーヌがやって来て,国王が狂気の発作にかられてアルゴスの王子オロントを殺害した後,自害したと伝える.クレユーズはそれを聞いて,メデに対する嫌悪感,恐怖感を露にする。メデが彼女の棒でクレユーズに触れて立去ると、クレユーズのドレスが炎に包まれ,ジャゾンの腕のなかで息絶える.ジャゾンは復讐を誓う。
メデが竜に乗って現われ,子どもたちを短剣で殺したと告げて立去ると,悪魔たちがあちこちから登場して,宮殿に火をつけ、焼き払ってしまう.

ディスコグラフィ

Deutsche Harmonia Mundi BVCD-37005-7
オーケストラ/レ・ザール・フロリサン
指揮/ウィリアム・クリスティ
メデ/ロレイン・ハント
ジャゾン/マーク・パドモ
クレオン/ベルナール・ドゥレトレ
クレユーズ/モニク・ザネッテ
オロント/ジャン=マルク・サルズマン

Armide Classics ARM002
オーケストラ/コンセール・スピリチュエル
合唱/Les Chantres du Centre de Musique Baroque de Versailles
指揮/エルヴェ・ニケ
メデ/ステファニー・ドゥストラック
ジャゾン/フランソワ=ニコラ・ジェスロ
クレユーズ/ガエル・メシャリ
クレオン/ベルトラン・シュベール
オロント/ルノー・ドゥレーグ

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