『ミューズたち』

Les Muses

台本/アントワーヌ・ダンシェ
音楽/アンドレ・カンプラ
ジャンル/オペラ=バレエ
初演/1703年

解説

個々の幕が個別に上演されることは何度かあったが、全体としての再演は国内ではなく、1711年にブリュッセルで行われただけである。
ルイ14世統治下でのバレエやオペラにおける政治的意味を扱ったカワートはThe Triumph of Pleasure『喜びの勝利』で、このオペラ=バレエが1666年に上演された『ミューズたちのバレエ』のパロディーだと見なし、オペラ座とそこで上演される多彩なジャンルの自己批判となっていると言う。
台本作家のダンシェ(上の写真)はほとんどのオペラのカンプラによって音楽化してもらっている人である。彼が1700年に音楽悲劇『エジオーヌ』を書いた時、教育者であったが、台本作家としての道を選んで、教育を捨てた。彼のオペラ台本はほとんどが成功したが、通常の悲劇は反対にほとんどが成功しなかった。にもかかわらず、1705年には王立碑文アカデミーの会員に、1712年にはアカデミー・フランセーズの会員に選ばれたので、作品によってではなくて、人柄によって選ばれたと憎まれ口をたたかれた。

プロローグ

哄笑の神であるモミュスが、パルナス山に人気がないのを訝しがっている。記憶の娘たちはパルナスの神々の栄光を讃えて、愛の神など軽蔑しているとみんな思っているが、じつは彼女たちが讃えているのは愛の神だと、自分は知っているのだと言う。技芸の栄光を求める高名な人間たちは今ではアポロンを離れて、別の神(愛の神)に従っていると言う。そこへミューズたちがやってくる。彼女たちを追って、セレスとバッキュスがやってきて、自分たちは愛の神と一緒になって人生で最も甘美な喜びを生み出すと歌う。アポロンがやってきて、パストラル、サティール、悲劇、喜劇のミューズたちが技を披露するから、それを楽しもうと呼びかける。

「パストラル」

舞台は羊飼いが住む村の近くの林。
羊飼いのパレモンが愛の甘美な苦悩を歌い、愛し合っている羊飼い娘のシルヴィーを、この王国の主のアルカスが愛していたら、自分は不幸になると嘆く。そこへアルカスがやってきて、これまでの浮気な愛と違う一途な愛をシルヴィーに感じていると告白する。そこへシルヴィーと羊飼い娘たちがやってきて、愛の神に支配され、一途に愛し合う自分たちの幸せを歌い、愛の神を称える。祝祭が終わると、アルカスはついにシルヴィーに愛を告白する。シルヴィーはすでに愛する人がいて、一途な愛という栄光以外の栄光は望まないと言って拒否する。アルカスは復讐してやると言う。パレモンが現れて、自分がそのライバルだと告白し、二人を引き裂くには自分の命を奪うしかないと言う。それを聞いてシルヴィーも彼が死んだら、自分も死ぬと言う。それを見たアルカスは一途に愛し・愛されることは至高の偉大さよりも魅力的な幸福だと理解する。

「風刺劇」

舞台はからかいの女神の神殿である。
宮廷人のアリスティップが、真面目すぎてはダメで、人から好かれるには真実に仮面を被せなければならないと助言すると、哲学者のディオジェーヌはそれが私の欠点で、なんでも真実を口にしてしまい、みんなから憎まれると言う。彼は若くてコケットなライスを愛しているが、からかいと笑いの自由を楽しむサチュルヌ祭でライスの浮気現場を捉えて、絆を断ち切り、自由になりたいと言う。
傲慢で、慎みのないアルシップが来て、ディオジェーヌに自分はライスと相思相愛の仲だと言う。ライスが来たので、ディオジェーヌは、二人は愛し合っていると言っているが、本当のことを言ってくれと言うと、ライスは、愛の神に無理強いされてアルシップを愛するようになったのだと言い訳する。だがディオジェーヌはその率直さが気に入る。最後にサチュルヌ祭になり、ライスは、愛の神に屈しなさい、慎み深い男を求めていたら、生涯誰の愛することはないと歌う。

「悲劇」

カリドンの女王のアルテは、家臣たちが歯向かって、彼女の息子の恋人のアタラント(アルカディアの王女)が自分の玉座を狙っていると思い込む。彼女の弟のプレクシップが瀕死の状態で戻ってくると、反乱の首謀者はあなたの息子のメレアーグルだと言って死ぬ。それを聞いたアルテは激怒し、復讐を誓う。他方、メレアーグルの恋人のアタラントは、自分の意志とは関係なく、自分が王座に担ぎ上げられようとしていることを嘆き、自分は権力には魅力を感じない、メレアーグルとの愛を育てたいだけだと言う。そこへカリドンの民がやってきて、アタラントに新たな女王になってほしいと賛辞を送り、歌とダンスで祝福する。しかしその途中でアタラントは激しい苦しみに襲われる。そこへアルテがやってきて、自分が復讐のために自分の息子を苦しみに突き落としたのだと言う。それを聞いてメレアーグルは激しい苦痛と絶望の中を死んでしまう。それを見たアルテは後悔から狂ってしまう。

「喜劇」

エリシーヌとエラストは愛し合っているのだが、エリシーヌがエラストの父親ジェロントと結婚することを知って、エラストは絶望し病気になってしまう。それを知ったエリシーヌは、医者に変装して、ジェロントに取り入り、息子の病気を治してやると言って近づく。エリシーヌは医者としてエラストに会い、あれこれ質問した後、息子を治せるのは私一人だと断言する。エリシーヌはジェロントと二人だけになると、エラストが愛している女性が自分に乗り移っていると言って、ジェロントが結婚しようとしているのが原因だから、結婚をやめなければ、もうじき息子は死ぬだろうと脅かすと、ジェロントは息子の幸せのために結婚を断念すると言う。その時エリシーヌは変装をとって、自分がエリシーヌだと明かすが、ジェロントはそれも医者の技だと思っていて、賞賛する。そこにエラストが戻ってきて、エリシーヌとの結婚が叶ったと知って喜ぶが、ジェロントは相変わらず、二人が変装しているのだと思っている。イタリア語のディヴェルティスマンが歌われる。最終場でパルナス山になり、モミュスがミューズたちを励まして終わる。

最初に戻る
年表に戻る
INDEXに戻る

inserted by FC2 system