『ナイス、平和のためのオペラ』

Naïs, opéra pour la Paix

台本/ルイ・ド・カユザック
音楽/ジャン=フィリップ・ラモー
ジャンル/英雄牧歌劇
初演/1749年
再演/1764年

解説

1749年に初演された英雄牧歌劇で、ラモーがルイ・ド・カユザックと協力して作曲した七つのオペラの第四作目にあたる(その他、『ザイス』『ゾロアストル』『レ・ボレアード』などがある)。オーストリア継承戦争(1740-48)を終結させることになったエクス・ラ・シャペルの和平(アーヘン条約)を祝うためにこのオペラは注文された。大きな犠牲を払ったこの和平のために祝賀行事には多くのフランス人があまり共感を寄せなかったが、この「平和のためのオペラ」はラモーの生前にかなりの成功を勝ち取り、初演から名誉あることに34回の上演回数を数えた。プロローグの「神々の合意」とは、神聖ローマ帝国の皇帝位継承をめぐる紛争をきっかけにその領土を簒奪しようとするフランス対イギリス・オランダの戦争を、タイタンと巨人による天界征服の試みとして、それを守るジュピテルの戦いとして描き出した寓話である。勝者として描かれるジュピテルは言うまでもなくルイ15世であるが、現実にはフランスはこの戦争をオーストリアの弱体化の格好の場として位置付け、相当な外交的、軍事的、財政的努力を費やしたにも関わらず、見事に失敗した。

プロローグ:神々の合意

ジュピテルと天界の神々を打ち倒して天界征服をたくらむタイタンと巨人たちが攻撃を仕掛けてくる。彼らは山をいくつも積み上げて天界に上ってこようというのだ。ジュピテルが雷を落として、彼らが積み上げた山を崩してしまう。  そこへプリュトンが現れ、タイタンたちを制止し、彼らを扇動する不和の女神と戦の女神を鎖につないでしまう。勝者ジュピテルは合意によって世界の平和がもたらされるように、ジュピテル・プリュトン・ネプチューンの間で世界を分け合おうと提案する。その結果、ジュピテルは空と天界を、ネプチューンは海を、プリュトンは大地の下を支配することになる。
 最後に、フロール(花の女神)が現れ、花を咲かせて地上の平和を謳う。一同の合唱「神々の合意は世界に平和を与える」とダンスでプロローグが幕を閉じる。

第一幕

舞台はコリントスのイストミアの岸辺。イストミア祭[古代ギリシャの四大祭典の一つ]が催されようとしている。ネプチューン(→)や彼の手下の神々がみんなギリシャ人に変装して登場する。ネプチューンは愛の神の矢の一撃によってニンフのナイスに恋をしてしまったのだ。ナイスはイストミア祭を司っており、ネプチューンはギリシャ人の姿でそれに参加して、彼女の心を射止めようと考えているのだ。
 競技会が始まり、アステリオンがこの競技会をネプチューンが注目しており、勝利した者たちには彼から栄誉が与えられるだろうと告げる。拳闘、レスリング、徒競争の競技、そして勝利者にナイスが冠を授ける様子がバレエによって描かれる。
 たくさんの小舟に乗った海の女神たちが現れ、イストミア祭を祝福する。彼らは船から降りて上陸してくる。その先頭に変装したネプチューンがいるが、ナイスはすぐに彼だと気づいて、理由を問い質す。ネプチューンは(まだ見抜かれていないつもりで)海の神がこの祭典を祝福するために自分たちをここに送ってきたのだと説明する。海の女神たちが祭典に出席している人々に豪華な品々を贈る。一同は愛の勝利を歌って踊る。

第二幕

ナイスの父親で、盲目の占い師のティレシウスの洞窟の前で、ネプチューンは自分の正体を明かすことなく、ナイスに愛を告白する。彼女は乱暴にそれを拒否するが、一人になると、ネプチューンが彼女の中に燈した新しい感情を味わうのだった。  テレニュスがやってきて、以前に見せた激しい嫉妬による醜態を謝る。テレニュスはナイスの態度がつっけんどんなものから、穏やかなものに変化していることに気づく。というよりもナイスはちょっと気がかりなことがあって上の空なのだ。彼女は父親でもある占い師のティレシウスに愛に洞窟の中へ入る。
 アステリオンが、イストミアの羊飼いたちに付き添われてやってきて、ナイスがどんな男と結婚することになるのか予言してくれるようにティレシウスに頼む。ティレシウスは羊飼いたちに頼んで、愛を称える歌を歌わせる。そこへ二人の若い羊飼いの男女がやってきて、愛の不安を焦燥を打ち明け相談すると、ティレシウスは優しくアドバイスを与えてやる。
 不安になったアステリオンがナイスのことを尋ねると、ティレシウスは目を覚ました鳥たちから神託を聞く。彼が言うには、異国のものがナイスの心を射止めるだろう、二人は海の神の激怒にあうだろうとのこと。テレニュスとアステリオンはこの見知らぬライバルを打ち倒そうと血気にはやる。

第三幕

夜明け前、イストミア祭にやってきた人々の船が見える岸辺で、相変わらずギリシャ人に変装したままのネプチューン(まだ「異国の若い人」でしかない)がナイスの到着を今か今かと待っている。そこへ取り乱したナイスがやってきて、激怒し武装した者たちが襲撃しようとして追って来ているから早く逃げるようにと教える。
 テレニュスやアステリオンが武装して船でやってくる。彼らがネプチューンたちのいる岸辺に上陸使用する直前に、ネプチューンの手下のプロテウスが引き起こした大津波にあって彼らの船は転覆する。まさに神託のとおりだと、ナイスは驚く。この若者(ネプチューン)に心惹かれているナイスは、神託どおりになればこの若者も恐ろしい目に会うことを怖れて、分かれようと提案する。それを聞いたネプチューンは真の姿を現し、ナイスを海の宮殿に連れて行く。二人はお互いへの愛を二重唱で歌う。最後に海の女神たちによるディヴェルティスマンから、全員でのコントルダンスによって締めくくられる。

ディスコグラフィ

ERATO 4509-98532-2
合唱・オーケストラ/English Bach Festival Baroque Orchestra
指揮/Nicholas MacGegan
ナイス/リンダ・ラッセル
ネプチューン/イアン・キャレイ
ジュピテル・テレニュス/イアン・キャディー
プリュトン/ジョン・トムリンソン
ティレシウス/リチャード・ジャクソン

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