『ファエトン』

Phaéton

台本/キノー
音楽/リュリ
ジャンル/音楽悲劇
初演/1683年
再演/1692年1702年
1710年21年30年42年

プロローグ:黄金時代の再来

 舞台は女神アストレの宮殿の庭園を表す。アストレは、踊りや歌でこの女神の気晴らしをしようと努める彼女の友人たちに取り囲まれている。彼女はかつて人間たちの悪意のために地上を離れなければならなくなったにも関わらず、人間たちに黄金時代が再び訪れることを願っている。
サチュルヌがアストレのもとにやってきて、一緒に地上に帰ろうと誘う.なぜなら地上に一人の英雄(ルイ14世)が現れて、世界を平定し、不和の女神を鎖にかけ、様々な事業を融合して、平和と喜びの新しい時代を切り開こうとしており、神々もそれを見守っているからだと説明する.
それを受けて、アストレも地上に戻ることを約束し、遊びの神々や平和の女神や正義の女神ももどってくることを呼びかける.

第一幕

 舞台はエジプト国の、人気のない庭園、中に洞窟があり、遠くには海が見える。エジプト国王の娘リビアが一人で夢想にふけるように、人を愛してしまったために心の平和が失われたことを嘆いている.そこへテオーヌ(ネプチューン(ポセイドン)の手下の神の一人であるプロテウスの娘)がやってきて、リビアのふさぎの理由を尋ねる。リビアはじつは愛している人がいて、父が今日選ぶ夫とその人が違っていたらと心配していたのだ。リビアが立ち去るのを入れ違いに、ファエトンがやってくる.
太陽神ヘリウスとクリメーヌ(ネプチューンの娘)の息子であるファエトンとテオーヌは一応相思相愛なのだが、最近のファエトンはテオーヌに冷たくなっている。いまも母親を探しに来たファエトンは、テオーヌに気づきもしない.テオーヌは愛し合い始めた頃は熱心だったファエトンの愛が冷めていることを激しくなじるが、ファエトンはそんなことはないと否定する.そこへファエトンの母親がやってきたので、テオーヌは離れる.
ファエトンはジュピテルの子エパフュスがリビアと結婚するのではないかと怖れている。というのは彼がエジプトの国王になれば、自分はその家臣とならなければならないからだ.クリメーヌはエジプト国王はファエトンをリビアの夫としてくれるからと、ファエトンを安心させようとするが、じつは彼女は、ファエトンがテオーヌと愛し合っていることがその妨げになるのではないかと怖れてもいるのだ。ファエトンは愛よりも栄光の方が大事だとはっきり言う。そこでクリメーヌは、予言力をもつ海の神プロテウスに尋ねる決心をする.
プロテウスは海から出てくると、洞窟の中に入って休む。彼は海の嵐と愛の苦しみは同じだから、どちらにも近寄らないようにしようと歌ったあと、眠り込む。
クリメーヌはプロテウスの兄のトリトンに頼んで、プロテウスがファエトンの未来を予言してくれるようにして欲しいと言う.
トリトンは従者を引き連れて、プロテウスが眠る洞窟に行き、楽しげな歌やダンスで彼の目を覚まし、この楽しみに彼を引き入れる.トリトンがクリメーヌの依頼を伝えると、プロテウスは秘密は守らなければならないと断って、様々な姿に変身をして逃げようとするが、彼らのしつこさに負けて、クリメーヌにファエトンの未来を話して聞かせる.それによると、ファエトンは栄光を無鉄砲に追い求めるあまりに死にそうになり、それを父親が助けようとするが、天に罰せられるというのであった.

第二幕

舞台は盛大な儀式のために装飾され準備された、エジプト国王の宮殿の一角.先ほどのプロテウスの予言についてファエトンと母親のクリメーヌが言い争っている。母親は息子のために高い位を願っていたが、それが死の代償を求められることであるのなら、そんな位は欲しくないと嘆くが、息子のほうは母親の願い―息子に高いくらいを望みながら、それと相容れない平穏な恋愛を望む―は矛盾していると指摘し、太陽神の息子なんだから自分のことは自分で決める、嫉妬ぶかい神々には怒らせておけばいいとうそぶく。だが母親の不安は募るばかり。
二人が退場すると、テオーヌが一人でエジプト国王の座にあっさりと自分との愛を捨てたファエトンの心変わりを嘆く。そこへリビアが来て、彼女は彼女で、自分の夫が自分の愛する人でなかったらと嘆きをもらす。そこへリビアと相思相愛の仲のエパフュスがやってきて、ファエトンがリビアの夫として選ばれたことを伝え、リビアを失ったことを嘆く。それでもあなたは父王の選択に従うのかと問うエパフュスに、リビアは愛よりも義務に従わねばならないと告げ、過酷な宿命を二人で歌う。

リビアとエパフュス
あなたのために生きていたら、
私の宿命はどんなに甘美だったことだろう!

エジプト国王メロプが、エチオピアの国王やインドの国王をはじめとした一同の前で、自分の後継者はファエトンであることを宣言する。一同の喜びのダンスと歌.

第三幕

舞台は女神イシスの神殿。ファエトンがリビアと結婚することになったことを知ったテオーヌが半狂乱になって、ファエトンに自分を捨てないでとすがりつく。ファエトンは、テオーヌを捨てることになったことに多少の罪の意識はありながらも、自分は世界を支配する運命のもとに生まれたのだからと言い訳をする。テオーヌが泣く姿に心打たれながらも、自分は愛ではなくて野心を取るんだと言い聞かせて、エジプトの国王になるべきものの義務である女神イシスの神殿への奉納へと向かう。
ジュピテルとイシスの子であるエパフュスは、自分から愛するリビアとエジプトの王座を奪ったことで、ファエトンを許すことができない。父たるジュピテルがファエトンに天罰を与えるだろうと脅かすと、ファエトンの方も太陽神の子だと言い返すが、エパフュスはそれは母親が言っているだけで、本当かどうか分からないと侮辱する。
女神イシスの神殿にエジプト国王・王妃をはじめとした人々が供え物を持って集まり、イシスの守護を祈願する。ところがエパフュスがファエトンから受けた侮辱に復讐して欲しいと訴えると、神殿の扉がいったん閉まったが、再び開いたときには、壮麗に見えていた神殿の内部は炎を吐き出す恐ろしい深淵となり、そこからフリアイたちや恐ろしい亡霊たちが出てきて、供え物をひっくり返したり、壊したりする。参会者たちは逃げ惑う。それを見たファエトンが母のクリメーヌにエパフュスから自分が本当に太陽神の子かどうか分からないと侮辱されたことを話すと、クリメーヌは真実だと誓う。そのとき風の神々が現れて、ファエトンを太陽神の神殿に連れて行くために、連れ去る。

第四幕

舞台はファエトンの父である太陽神の宮殿。時の女神たちや四季の神々が太陽神の恵を称えて歌い、踊る。
そこへファエトンがやってくる。太陽神はファエトンが悲しそうにしているのを見て、理由を問いただすと、ファエトンは自分が太陽神の子ではないと侮辱されたと訴える。太陽神は父だと誓い、その証として、ファエトンが望むことをなんでもしてやると言う。ファエトンは父の代わりに日輪の車に乗って、世界を照らしてみたいと要求するが、さすがにそれは人間の力を超えたことだと言って断る。そろそろ夜明けとなり、太陽神は日輪の車に乗って出かけなければならない。

第五幕

舞台は夜明けの田園地帯で、ファエトンが太陽神の日輪の車に乗って地平線に上がっていくのが見える。母親のクリメーヌはそれを見て喜び、人々にわが子の栄光に満ちた姿を見てくれと触れて回る。エパフュスは激怒のあまり、ジュピテルとイシスに復讐をしてくれと懇願する。かつての恋人リビアが来て、自分はもうあなたのものではない、なにも期待しないでくれと言う。クリメーヌやエジプト国王のメロプたちは踊ったり歌ったりして喜びを表すが、そこにファエトンのかつての恋人だったテオーヌが来て、プロテウスの不吉な予言を繰り返す。そのとき突然、天が輝き、あたり一面を燃え尽くすほどの炎に覆われる。ファエトンが日輪の車を制御できなくなり、無茶苦茶な動きをしているのだ。大地の女神はこのままでは全てが灰になってしまう、はやく懲らしめてくれと、ジュピテルに訴える。それを受けて、ジュピテルがファエトンを雷の一撃で打ち落とす。

ディスコグラフィ

ERATO 4509-91737-2
合唱・オーケストラ/Les Musiciens du Louvre
指揮/マルク・ミンコウスキ
ファエトン/ハワード・クルック
クリメーヌ/レイチェル・イェーカー
テオーヌ/ジェニファー・スミス
リビア/ヴェロニック・ジャン
エパフュス/ジェラール・トゥルィユ

オーケストラ/Les Talens lyriques  合唱/Choeur de Namur  指揮/クリストフ・ルセ  ファエトン/Emikoano Gonzalez Toro  リビア/Gaelle Arquez  クリメーヌ/Ingrid Perrche  テオーヌ/Isabelle Druet 

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