『タンクレード』

Tancrède

台本/アントワーヌ・ダンシェ
音楽/アンドレ・カンプラ
ジャンル/音楽悲劇
初演/1702年

解説

1660年に南仏のエク・サン・プロヴァンスで生まれたアンドレ・カンプラはこの地のカテドラルで音楽教育を受けた.1694年からはパリのノートル・ダム寺院の音楽監督を務めた.1697年の『優雅なヨーロッパ』でオペラ=バレというフランス的なジャンルを創始することになるが,フランス的センスとイタリア的センスの融合という彼の特徴は,南仏の出身ということも大いに影響したのかもしれない.『タンクレード』は,リュリの『アルミード』と同様に,イタリアの詩人タッソの『解放されたエルサレム』をもとにした悲劇である.18世紀に179回も上演された.

プロローグ

平和の女神が,従者の遊びの神々,喜びの神々、キューピッドたちと一緒に降りてくる.彼女は,不和の女神が地上の幸福を終わらせようとするのを許さないでほしいと,神々に求める.平和の女神の従者たちのディヴェルティスマン.平和の女神は青春の女神に,悲しみの女神を逃れて愛の神を求めるように呼びかける.

第一幕

サラセン王国のアルガンは王家のエルミニーに王家を滅ぼしたタンクレードに対する復讐を表明する.彼は,タンクレードがサラセンの王女のクロランドを打ち負かしたので彼女を解放するつもりだと説明する.それを聞いて,エルミニーは混乱を隠すことが出来ず、アルガンは彼女がタンクレードを愛しているのを理解する.彼女は囚われの身になったときに,タンクレードを愛してしまい,その愛を諦めることができないと告白する.
魔術師のイスメノールが自分の魔術を使うことをアルガンに提案する。またエルミニーを愛していることを告白する.アルガンは自分の剣でタンクレードを倒したいのだと言うと、イスメノールはその高貴な態度に感心し、助力を申し出る.二人で復讐を誓い合う.兵士の一団を前に、アルガンはタンクレードを殺すか、さもなくばこちらが死ぬまでだと,決死の覚悟でタンクレードと戦うことを誓う.
イスメノールは魔術師たちとともに,悪魔たちにはキューピッドの姿になるように,サラセンの国王たちの霊には黄泉の国から出てきて加勢をしてくれるようにと呼びかける.雷が落ちて,墓石を打ち砕く.アルガンは,あまりの恐ろしさに、兵士たちを激励し、とりあえずは自分たちだけで戦うと,イスメノールに指示する.

第二幕

舞台はキリスト教徒の騎士タンクレードの陣営。クロランドはタンクレードの捕虜となってここにいる。戦闘で彼に打ち負かされただけでなく、彼に対する愛が芽生えてきて,心も彼の虜となりつつあるが,それに抵抗しようとしている.
タンクレードがやって来て捕虜を全員解放するし,クロランドも自由にすると彼女に告げる.タンクレードはクロランドを愛していると告白し、どうやって恋に落ちたかを話す。だがクロランドは本心を隠して、彼には憎しみしかもつことはできないと答える.
タンクレードが捕虜たちを解放すると,彼らは喜びを踊って表す。クロランドはタンクレードが申し出た解放を拒否し、アルガンによって解放されるのを待つと言う.一人の兵士が来て,隣の森で兵士たちが魔術の犠牲になっていると知らせる。タンクレードは勇んで加勢に出かける準備をする.

第三幕

舞台はイスメノールが魔法をかけた魔法の森。兵士の報告でエルミニーとアルガンは,タンクレードがクロランドを愛していること、クロランドもタンクレードに解放されたのに、それを断ったことを知る.エルミニーもアルガンも嫉妬と怒りを感じる.アルガンはイスメノールがかけた魔術だけでは不十分だと判断し、タンクレードを攻撃しに行く決心をする.
一人になったエルミニーは,愛するタンクレードに愛されない苦しみを歌う.
タンクレードは魔法の森に入ろうとすると,炎が立ちふさがり、悪魔たちが空中を飛び交う.そして木々からうめき声や嘆き声が聞こえてきて、タンクレードの士気をそぐ.だが彼はこれが魔術だから,耐えなければならないと,自分に言い聞かせて,進もうとすると,木々が押し寄せて前進を妨げる.それからニンフたち、ドリュアデス、羊飼いたち,牧神たちが出てきて、愛の悲しみを歌ったり、踊ったりする。
エルミニーは,タンクレードを追ってやってきたクロランドに会う。エルミニーはクロランドの心を読んでやろうと、タンクレードが死んだという嘘をつく。それを聞いたクロランドはタンクレードへの愛を告白し、彼を追って死ぬ前に,復讐をすると言う。それを聞いたエルミニーは嘘だったことを告白し、嫉妬を爆発させ、自分の力を見せるために悪魔たちを登場させ木々を粉々にさせてしまう.
クロランドは一人になると、自分の家臣や栄光を裏切ることになるが、タンクレードを助ける決心をする。

第四幕

舞台は魔法の森の中の恐ろしげな場所。タンクレードは森の中を彷徨って,意気消沈し,死を決意する。彼はエルミニーに出会う。彼女は彼女の憎悪の理由を話すが、タンクレードには理解できない。エルミニーはタンクレードをイスメノールに委ねる.イスメノールがタンクレードに魔法の棒で触れると,タンクレードは祭壇の上に倒れる.復讐の女神や憎悪の女神の従者がタンクレードを苦しませる.短剣を持ったイスメノールがタンクレードを刺し殺そうとすると,エルミニーが止めさせる.彼女がタンクレードへの愛から裏切ったことを知って、激怒したイスメノールが再度タンクレードを殺そうとしたとき,クロランドがやってきたので止めて,彼女に委ねる.イスメノールは復讐の女神たちと退場する.
タンクレードのところへクロランドがやって来て、タンクレードに武器を返し,お別れしなければならないと告げる.彼女はタンクレードを愛していると告白するが,栄光のために愛を捨てなければならないということを思い出させる.断腸の思いで、二人は分かれる.一人残されたクロランドは,自分の弱さを責め、アルガンの陣営に戻っていく。

第五幕

舞台は野営地で,遠くには町の堡塁が見える。夜明け前、トランペットの音が聞こえる。エルミニーは一人で愛の苦しみに身をゆだねている。トランペットの音が勝利者の凱旋を知らせる.タンクレードが凱旋し,クロランドと分かれてきたこと,アルガンと対決して彼を打ち倒したことを話す.エルミニーはアルガンの死を知って絶望に陥る。
タンクレードの兵士たちがアルガンの武具を大盾にのせてもってきたので,タンクレードはたしかにアルガンのものだと確認すると、一同が勝利の喜びを歌う。
そこに死んだはずのアルガンがやってくる。驚いているタンクレードに、タンクレードが殺したのはじつはクロランドだったのだと教える。夜の闇にまぎれて彼女はアルガンの武具を身につけ、タンクレードと戦い、敗れたのだった.タンクレードは絶望のあまり,自殺しようとするが、兵士たちに剣を取り上げられてしまい,狂乱状態に陥る.

ディスコグラフィ

ERATO 2292-45001-2
オーケストラ/La Grande Écurie et La Chambre du Roy
指揮/ジャン=クロード・マルゴワール
タンクレード/フランソワ・ルルー
クロランド/ダフネ・エヴァンジュラトス
エルミニー/カトリーヌ・デュボ
アルガン/ピエール=イヴ・ルメガ
イスメノール/グレゴリー・ラインハルト

第五幕の"Chantons les douceurs de la gloire"

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